第43話 俺の日常と教団の近況

 この教団の基本産業は農業なので、農閑期になると色々空気が落ち着く。

 無論畜産関係とか年中それほど忙しさが変わらない部門もあるけれど。

 落ち着いたところで生命の神セドナ教団の使徒である俺の週のスケジュールを整理してみよう。

 なおこの国では1週間は6日。うち最後の1日は安息日で基本的に休日だ。


 まず1の曜日。

 俺とイザベルは早朝発の馬車に乗って王都アネイアの綺麗な方の施療院へ。

 だいたい3時間くらいで到着し、患者の診察を開始する。

 ここの施療院は1の曜日の午前は重病重傷重症難病患者指定日。

 なので結構大変だ。

 最近は貴族の患者まで治療実績を聞きつけてやって来ている始末。

 故にかなり患者は多く忙しい。

 それでも午後1時頃にはひととおり患者もさばけるので食事をして移動。

 今度は貧民街にある方の施療院で同じく重病重傷重症難病患者の治療に当たる。

 こっちの患者が終わったら今度は家から動かせない状態の患者の往診だ。

 そんな感じでだいたい1の曜日はアネイア泊まりになる。


 2の曜日は馬車でラテラノの教団本部へ帰る。

 本部を早朝に出た馬車の戻り便なので出発は9時過ぎ。

 だから本部についた頃にはもうお昼だ。

 一度学校に顔を出した後、場合によっては開発室にこもり作業をする。


 3の曜日は午前中は学校、午後はだいたい開発室。

 この日はグロリアとロゼッタがアネイアに行っている。

 だから学校の授業もそこそこ入っている感じだ。

 4の曜日も日課は同じだがこの日は開発室の面子が全員揃っている。

 だから学校や開発室関係の会議等は4の曜日にやる事が多い。

 学校関係の要望等をまとめるのもこの日だ。


 5の曜日はまず朝の説法。

 教団トップである使徒として本部のドームで20分くらいありがたいお話をする。

 この作業は最近だいぶ慣れてきた。

 相変わらず原稿はイザベルに書いて貰っているけれど。

 その後は本部で大司教4人との会議。

 教団運営の現状報告を受け今後の必要事項等を話し合う。

 これが結構長くなることが多い。

 人員調整だの予算補正配分だの色々と話すべき事があるのだ。

 施療院が増えたので施術師の人員が足りないとか。

 レストラン開店準備のため人員異動だとか。

 それが終わったら食事をして教団本部の施療院や農場の巡回。

 この辺も大体夕食までかかるし、場合によっては夕食後も施術を続けたりする。


 6の曜日こと安息日は基本的に祝日。

 でも朝食後から俺の部屋にイザベルだとか生徒だとかが押し寄せゲーム大会だの何処かへ出かけるだのやる訳だ。

 出かけるといってもせいぜいリアーナの町くらいだけれど。

 大体夕食前くらいまで生徒達につきまとわれる。


 こうして1週間の動きをみてみると我ながら忙しいよな。

 しかもプライベートな時間がほとんど無い。

 なおかつほぼ毎日大体イザベルと行動を共にしている。

 生徒の間で俺とイザベルの関係が怪しい説が出るのも無理はないかもしれない。

 その説がある程度以上広がらないのは俺の人徳かイザベルの外見のおかげか。

 

 あとは学校の冬休みに再び国内の教団施設の巡視をする予定だ。

 俺の場合の巡視とは

  ① 各支部でありがたい説教をして

  ② 施療院で難病等の患者を治療し

  ③ 農場を確認して場合によっては土等に施術をかける

という作業。

 これも1人では厳しいのでイザベルを同行させる。

 本当は2人でも厳しい。

 だからイザベルが現在グロリアとロレッタに高等治療だの土壌浄化だのの施術を鋭意指導中だ。

 4人体制になれば大分楽ができるよな。

 特に高等治療施術は施療院で働く機会がある2人には是非憶えて貰いたいし。


 施術の指導といえば教団本部でオルレナ大司教が行っている初級治療と初級回復の長期講習会。

 あれをもっと拡大して学校形式で行おうという計画が進んでいる。

 対象を一般人にも広げ、更に中等、高等施術を教える課程も作ろうという案だ。

 これは施療院拡大の為治療担当が足りなくなりつつある事を受けて発案された。

 でも他に教団以外の病気治療体制が思った以上に貧弱だった事が判明したという理由もある。

 これは各地で新しい施療院を運営しはじめてから判明した事だ。

 どうも貴族等が使用する往診医も腕的にあまり信用できない者が多いらしい。

 そのせいで各地に出来た新しい施療院は貴族の患者もかなり来ている。

 本来は中層階級用に作った施設なのに。

 だから学校形式で治療者を養成して国内の医療水準を底上げしようという話だ。


 この医療学校もとりあえずはここラテラノの教団本部に接した場所に建築予定で、既に土地の整理が始まっている。

 ただこの医療学校と元からある学校、更に各地で新設している教会や施療院やレストランやジューススタンド。

 そのせいで砂糖や簡単料理シリーズでかなり増えたと思った収入も、また結果的には消えてしまいそうな予感だ。

 まあ教団内部の生活環境も大分良くなったし、生命の神セドナ教団としての救済活動も広がってはいるのだけれど。


 また会計関係の組織改革も急ピッチで進んでいる。

 これは大司教方と俺が参加する最高連絡会議で話し合った結果だ。

 スコラダ大司教によると『生命の神セドナ教団が最近拡張傾向にあるのを見て警戒する動きが出はじめている』らしい。

 従って組織防衛の為にも会計処理の透明化は出来るだけ早期にやっておくべきだという結論になった。

 会計書類や人事書類の保存等についても同様に民間商業並みかそれ以上の体制になるよう組織改革が進んでいる。

 この手の事は利益を生まないし人員もとられるし積極的にやりたい仕事では無い。

 でも組織防衛の為という事で意見が一致した。

 俺、スコラダ大司教、ソーフィア大司教の意見が一致すればあと2人はどうでもいいという感じだけれども。

 そんな感じで冬の間でも改革は確実に進んでいく。

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