第9話 既視感と全員集合

「まあまだ全員はこっちに来てないけどね」

と付け加えた。喋り方からそれほど事態は深刻ではない様だけど、分からないな〜この人いつも軽いからな〜。

「それならそれ相応の準備を開始しないとね。というわけで資金面の支援を要請します」

「いいよいくらだい?」

博士と社長の会話に俺達の入る隙はない様だ、社長が帰ってきた今は社長の指示に従うまでだから別に良いけど。暇だなぁ


「そんじゃあよろしくね〜」

「わかったわ」

話が終わり、研究所を出た。

「にしても、可愛い子を捕まえてどうする気なんだい?」

「なんもしないよ、騙されて買っちゃっただけだ」

「いんやぁ、私にはわかるぞー。なんか理由があると見た。そもそも翔夢偉はそういう罠に引っ掛かんないでしょ」

まったくこの人は。軽い口調なのにすぐ人を見抜く。

「やっぱり師匠にはわかっちゃいますよね」

「それが師匠ってもんだよ」

ミナヅキは俺の背中で寝ているから良いか

「似ていた気がしたんです。自分に」

静かに話し出す。誰にも言うつもりじゃなかった心を

「何をやれば良いのか分からない、死ぬ事さえやる気が出ずポツンと公園のベンチに座っていたあの日の事を他者から見たらこんな風に見えていたんだろうな。そんな風に思えたんです。それで話しかけたんです。あの日の師匠のように」

あの日俺は救われた。ヒーローのようだった。

『どうしたんだい?こんな所で』

分岐点はこの一言だったんだろう。

「師匠のように、ミナヅキの俺にあたる師匠のような存在になりたいと無意識に思ったんです」

「そうか」

と一言言い、それと同時に満面の笑みで

「なら、なってやれ師匠とやらにな!」


「ただいま〜」「帰ってきたー!」

「おかえり〜って恵ちゃん!?」

「お〜愛しのあずき〜!」

ガシッという擬音がなりそうな勢いで抱き合う2人。まぁいつも通りなんだが、飽きないな〜2人とも。

「お帰りでしたか立花さん」

「健也も変わらないなその堅さ。まあいいや早速頼み事を頼まれてくれないか?」

「よろこんで」

健也は師匠には頭が上がらないらしく、かなり下からの言葉使いになる。過去のことは聞かないのがこの家の鉄則みたいなもので、詳しいことはわからない。

「ここ最近で起こったモンスター絡みの事件を地図に記して送って欲しい。できるか?」

「もちろんです」

「恵ちゃんが帰ったってことはもしかしてS級モンスター?」

「あずきにしては感がいいな」

「翔夢偉なんか言った?」

「いや、なんも」

だからその目やめろ。かなり殺気を帯びてるから。

「ははは、仲良くて結構だ。まぁ詳しいことは今度の休みだ。とにかく今は」

「「「今は?」」」

「寝たい」

そう言って俺の寝室のドアを閉めた。いや自分の部屋に行けよ残してんだから。

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