第8話 研究所と社長

翔夢偉とミナヅキは研究所に訪れていた、あずきは学校、健也は家事と事務業務を担当しているので、ほとんどいる場所は事務所だ。

「なるほどね〜 確かにこれはおかしいね」

そう発した者の主であり、この日野研究所の博士である、日野比奈子ひのひなこだ。

「で、この原因は分かるのか?」

「わからない。と言えば嘘になるがまだ情報が足りない。かもしれないなんて言葉は好きじゃないんでね。確信が持ってから言いたい。まぁちょっと待ってなさい」

そう言うと奥へ入っていった。まぁ焦っても仕方がない。それより、

「ミナズキ、そう警戒するな、怪しいところではない。まぁこんだけ獣人の資料が壁に貼ってあったらビビるか」

この研究所は主に獣人の研究をしている。と言ってもうちと同じで獣人を大切にする考えの下、研究を行っているため非人道的なことはしない。だから関係を築けているわけでもあるが。異様だよなぁこの部屋。


「今他の研究所さんにも似たような情報が無いか聞いてみたところ、やはりこの近辺で同じようなことがあるみたい」

 数時間待っていたところに声がかかる。どうやら調べごとは終わったみたいだ。ミナズキは眠ってしまっているが話は続ける。

「というのはモンスターの襲撃があちこちで起きていた、ということか?」

「いや、そうじゃなくこの地域内で多発しているということ」

 と、比奈子は地図を広げ赤ペンで丸を書く。確かに自分たちが遭遇した街もその円の中に入っている。

「ある一定の地域内でのモンスターの増加。これは間違いなくアレね」

「そう、それよ」

と入り口の方から発せられる。寝ていたミナヅキが飛び上がる様に起きすぐに威嚇する。が俺はこの声を知っていた。

「帰ってくるなら連絡してくださいって言ってるじゃないですか、師匠」

「いやぁめんどくさいじゃない?そういうの。それと今は社長ですよー」

変わらないなこの人は。社長の自覚はあるのかね。

「っとこの子が言っていた子かい?なかなか可愛いじゃないか」

とミナヅキに寄るがミナヅキは距離を取ってしまう。

「そういえば言ってなかったか」

そう言って社長に目配せをした。伝わったのか彼女口を開いた。

「私は立花自衛業社長兼世界モンスター対応機関の傭兵部隊564部隊副隊長、立花恵たちばなめぐみだ」


 世界モンスター対応機関。通称WMO。基本的には世界のモンスターの情報を預かり研究、発信する機関であるが、まぁモンスター関連のことなら何でも対応してくれる優れた機関だ。その機関から依頼され集まった先鋭たちがこの564部隊である。主な任務は、世界に出現したS級モンスターの討伐である。つまりはS級モンスターを相手にできるメンバーが揃っているのだ。その一人が立花自衛業の社長である立花恵である。


「だから俺が社長代理なんてやってるんだがな」

こくこくと頷きながらミナヅキは話を聞いてくれている。なかなか良い子に育ってくれた。翔夢偉うれしい。

「話が逸れてしまったけれど、あなたがここにいるということはやはりそういうことなのね」

比奈子が話を戻した。無論俺にも何のことかわかった。

「つまりは、S級モンスターの出現の前兆ということか?」

「正解!これはWHOも察知していたわ」



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