第3話 立花自衛業と家族

「着いたぞ」

自分にとってはいつもの風景だが彼女にとっては初めての場所。立花自衛業の事務所だ。扉を開け、部屋に入る。アヒルの親子のように後についてミナヅキが入ってきた。

「おかえりー 翔夢偉。遅かったじゃん。ってその子誰!まさか...」

「そのまさかじゃないからその携帯をしまえ」

部屋の中にいた少女が食い付いてくる。

「翔夢偉...自首しよ...ついて行ってあげるから」

「なにをだよ。なにもしてないし、しないよ」

「そろそろからかうのはやめろよ。あずき」

奥から20代後半の青年が来た。

「ちぇー、面白かったのに」

「俺は面白くなかった。まぁいいや。ミナヅキ、こっちのうるさいお姉ちゃんが相模あずきでこっちのお兄さんの方が相模健也。これから一緒に過ごす家族だ」

「かぞく?」

そう言って二人を見つめる。ここは事務所であり、俺たちの家なのだ。

「でこの子はなんなの?」

「騙されて買わされた」

「ふーん ねぇなにが好きなの?」

ミナヅキは怯えて後ろから出てこなかったがあずきが強引に抱きつきに行っていた。まぁミナヅキの良い遊び相手になるだろう。

「それから、あの子をどうするんだい?翔夢偉」

「いくあてもないみたいだし立派な傭兵に仕立て上げるつもりだ。あずき、明日一緒に訓練場で訓練してやってくれないか?」

「いいよー」

「そしたらあずきが学校から帰ってくるまで基本的な知識を私が教えておきましょう」

「たのむ、明日はB級モンスターの討伐だから今日はもう寝る。俺の分はミナヅキに食べさせてやれ」

そう言って自室に入る。あずきに任せておけばミナヅキは大丈夫だろう。あいつは面倒見だけは良いからな。


「お父さん!お母さん!」

泣き叫ぶ声。それに帰ってくるのは断末魔と赤い風景。自分は見ていることしかできない。親を無くす恐怖は子供にとって大きな傷となる。その子はそこで意識が途絶えた。


目が覚めた。悪夢を見た。その夢はかなり実感もあり嫌な気持ちになる。

「それはそうだ」

ため息をつきながら支度をし3人から4人住まいとなった家を出ていく。

「どこいくの?」

誰も起きてないであろうと、黙って行こうとしていたところに声がかかる。

「起きてたのか、大丈夫だ仕事しに行くだけだ」

自分で言っておいて父親みたいだなと嘲笑する。

「それじゃあいってきます」

ミナヅキはひとつ頷いて出ていくのを見ていた。


仕事は依頼されたモンスター退治をして、それを処理し依頼料をもらう。武器は一般的に銃火器が使われる。俺は自衛隊からもらった自動小銃を基本的に使っている。今回倒すモンスターはB級だがモンスターには大きさや素早さで五段階の階級がある。大きさでいえばD級モンスターは虫〜小動物程度。C級モンスターは小動物〜人程度。B級は人〜象程度。A級はビル3階くらいまで。S級はそれこそ◯ジラサイズの大きさなことが多い。だが例外もある。今回倒すモンスターはB級だがサイズ自体はC級の大きさ。しかしとても素早く、倒しづらいためB級になっている。この手のモンスターは、一発当てて動きを封じてから、とどめを刺すのが効率的だ。


仕事を終え、帰宅すると玄関にミナヅキが立っていた。

「待ってたのか?大丈夫だって言ったろ」

少し暗い表情になる。少し言いすぎたか。

「怒ってる訳じゃないんだ。自分をもっと大切にしろってこと」

それを聞いたミナヅキは元気に頷く。まだ子供だな。

「じゃあ中に入ろう。正直あずきが帰ってくるまで休みたい」

そう言って二人は中に入った。






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