第2話 着替えと入隊

「それでこれからどうするの?」

 ミナヅキは怯えながら聞いてくる。それはそうだ、いきなり来た男にいきなり買われたのだ。怖がるのは普通のことである。

「どうしたものか」

考えていなかった。あと先考えないのは自分の悪い癖だというのは自覚はしてはいるが、癖というものは直らないから癖なのだ。

頭をフル回転しても良い案は出ない。ふと、ミナヅキを見てみた。

「服、いや身なり全体を揃えるか」

「! わかった」

少し顔が緩む。流石に男が大きめなTシャツにフード付きパーカーだけの少女を連れて歩いていたら、明日の回覧板にデビューしてしまう。


 獣人に人権は無い。それは今のこの国で常識になっていた。それはモンスターから生まれたからというのもあるが、事件当日に起こった出来事によるもののせいでもある。国会討論をやっている中にモンスターが乱入したのだ。モンスターは殺戮の限りを尽くした後、光を放ち獣人になった。この出来事はネット配信で一部始終配信されており、瞬く間に国中に広がった。そのため獣人はモンスターという認識が強い。だから獣人が売買されているのも「人を買う」という感覚より「モンスターを飼う」という認識が強い。しかし中には獣人の権利を主張する団体もある。立花自衛業もその一つだ。

「社長代理の俺が獣人を買ったということは隠した方が良さそうだな」

世間は厳しいからな、すぐ揚げ足をとる。


「どう...です...か?」

試着から出てきたミナヅキが問う。違和感しか無い服装で。それはそうだ、男物の服なのだから。

「何でその服にした?」

「かむい様を見て選んだ」

「お前の服はあっちのコーナーだ。あと様はやめろ」

だがミナヅキは首を傾げる。そうか普通の服すらわからないのか。仕方ない。

「すみません。この子の服を見て欲しいんですが」

こういうのはプロに任せるのが良いだろう。


 買い物を終え、店から出た。改めて見ると耳と尻尾以外は人にしか見えない。青い瞳に背中の半分くらいまである茶色の髪。部位ははっきりしてるし、言葉も喋る。

「これからどうするの?」

買い物前にも聞いた言葉を発する。正直どうしたもんか検討もつかない。自分からあげられる生き方は一つしかないがおすすめはしたくない。

「ミナヅキはどうしたい?」

「わたしは、かむい様に買われた。かむい様の指示に従う。そう教えられた」

変なこと吹き込んでんのはどっちだ。仕方がないが聞いておくことがある。

「運動は得意か?」

「人よりは動ける」

ミナヅキは素早く返す。自信満々のようだ。じゃあ

「モンスターは殺せるか?」

「同族意識はわたしにはない」

冷たいトーンで言う。それはこの発言が事実だと言うことなのだろう。

「それなら傭兵にならないか」

「ようへい?」

「住まわすのは良いが、お金が掛かる。だから手伝って欲しいんだ。傭兵は人と接することも多いから、社会勉強にもなる」

これには思惑もある。できるだけ多くの時間を過ごし、観察すること。獣人は生態がよくわからないなぜ人語を喋るのかすごく気になるし、解明したい。

「...うん、わかった」

「自分が言うのはなんだが、良いのか」

「断る理由がない」ぐぅぅぅ〜「あ」

「そういえば飯がまだだったか、ファミレスもいいが今日は家で食うか」

「うん!」


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