傭兵と獣人

橘 黒無幻

第1話 世界と出会い

 あの日世界は壊れた。突如現れたモンスターによる進撃によって、ありとあらゆるモノが壊れた。建物、平和、秩序、人。数えていたらキリが無いだろう。この光景を第三者がいて、観ているのであれば必ずこう言うだろう。

      「地獄」だったと。



 「あの事件から10年か」

誰にも届かない声で呟く。あの事件があった後モンスター本隊は撤退をした様だが、各地から何処からともなくモンスターが現れるようになった。流石に自衛隊だけでは対処が出来なくなった。そこで声を上げたのが当時の自警団である。国は自警団の武装を認めた。だが、自警団というものは何か決まりのあるものではなく、ただの人の集まりだ。人が多く欲しかったのは分かるが、武装できる条件が軽すぎた。結果を言えば武装ヤンキー集団などが荒らしまくり、治安は最悪になった。

最終的には警察などを脅し違法行為を平気でやる始末。暴力の好きな人が暴力で金を稼げるのだからやらない奴はいないだろう。

「帰るか」

下らないことを考えてしまった。アレでも人を守る傭兵なのだから、あまり悪口を言うもんでは無いな。


 しばらく歩いていたらベンチにフードを深く被った子供が座っていた。だがおかしい。今日は平日で日は頭の上から少しずれたくらいの時間だ。壊れきったとはいえ義務教育くらいは残っている。

「獣人か?」

獣人。モンスターから生まれた人型の生命体。そのため差別されてきており人だ、モンスターだ、の論争は毎日のように続けられている。ただ気になるのはこの獣人から何か既視感を感じる。いや、自分では分かっているのだ。

「どうした?こんなところで。」

「...」

「?」

「に..げ..て...」

「おいおい、そこの兄ちゃん。人の売り物に変なこと吹き込むなよ。」

物陰から武装したガタイの良い男が出てきた。なるほど罠だったのか。

「何もしてないだろ」

「いや、わからねぇ。見てねぇときに何か仕込まれてたらわからねぇからなぁ」

こちらに証明しようが無い以上話を聞くしか無いか。

「わかった。買ってやるよ。いくらだ?」

「わかってるじゃねぇか。300万だ」

「嘘だな。売れないからこの方法なんだろ。もっと安くしろ。」

「チッ!190万だ」

「pay払いで」

男は支払ったら獣人を置いて去っていた。さっきの声を聞く限り女の子だろう。

「名前はあるかい?」

「ない、私生まれたばかり」

俺は名前を決めるのは苦手なんだがな。

「んーじゃあ、君の名前はミナヅキ。由来は今日が6月だから」

「わかった。それでマスターこれからどうするの?」

「マスターか。悪くはないが良くも無いな」

「それではなんで呼べば良いの?」

「そういえば自己紹介がまだったな。

俺の名前は 橘 翔夢偉かむいだ。立花自衛業で社長代理をやっている。」

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