第2話 放課後ゲーセン

こんなに大きな音がする必要があるのか…そんなことを思いながら俺はメダルゲームで1人、飛び跳ねて遊ぶ彼女を横目に溜息をつく。ふと腕時計の目をやると思った以上に時間は過ぎていた。


「優真くんマリカー弱いね!」


ケラケラと笑う彼女を思い出す。もう一度溜息をつく。

メダルゲームに飽きたのか彼女は俺の方を振り向くと真っ直ぐにこちらに向かってきた。


「全然楽しんでない!そんなことじゃあメダルの神様は降りてこないよ!」


「じゃあお前も楽しんでないんだな」


「それは…あ、あれだよ!今神さまは冬眠してるんだよ!」


今は春だ。


「ていうか私はお前ではありませんー、沙智って呼んでいいって何度も言ってるでしょ!」


この子にパーソナルスペースはないのか。


「そうだったっけ?新条さん」


「あーそういうことするんだね、だったらこっちにも考えがあるよ!」


嫌な予感


「ゲーセンの締めはやっぱりプリクラだよ!」


当たっちゃったよ…


「そろそろ門限だし帰ろっか」


「優真くんの家門限ないよね」


「ほら俺ら高校生は夜出歩いてたら歩道されるから」


「優真くんの家ないよね」


「それはあるから!」


「優真く…」


「分かったから!撮るから!」


彼女言葉を遮って叫ぶ。こうなったら腹をくくるしかない。


「ほんと!良かったぁ、もしかしてプリクラ嫌いなのかと思ったよー」


今日1番のニヤニヤ顔


「さあ、早く行くぞ」


せめて主導権を握りたいが為にちょっと格好つけて歩き出す。そんな考えは


「あ、優真くんそっち逆だよー」


という声に打ち砕かれた。




「私たちの関係ってどれかな?」


「ニヤニヤするな、ふつーに友達だろ」


「えー、優真くんは私のこと友達だとおもってくれてたんだー照れるなあ」


「友達が1番下のモードなんだよ!」


「えい!」


不意に彼女の手が画面へと伸びる。その綺麗な指が綺麗に押したのは友達でもなく親友でもなく恋人という二文字だ。


「お前、やってくれたな…」


これ最後キスとかくるやつだぞ…


「お前じゃないです!私に…」


「それはもういいから」


被告に反省の色無し


「まあやっちゃったもんはしょうがないよね!恋人が目つき悪い人だけど我慢してあげる!」


「全部お前発端だよ!」




「あはははは!」


彼女は俺の右側でプリクラを見てずっと笑っている。


「き、機械の限界…」


「…」


「な、なんでプリクラなのに目おっきくならないの、あはははは!」


「笑いすぎだろ!」


俺の目つきの悪さは機械でも勝てないのか…


「まあ、元気出して…私結構その目好きだよ…あはははは!」


「笑いながら言うのをやめてくれ…」


まあこうやって笑ってくれるのはいいことだろう。全然変わったんだ。ふと出会った当初のことを思い出す。あの頃は…

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