Message to ...


 過去、考えられないような醜態を晒した。それでも、我を通すことを止めなかった。それが或る意味でこの上なく愚かな行為だとは分かっていた。

 あの時。千鳥が仮面を拒んだとしても、辰哉は願いを放棄しなかっただろう。千鳥以外の別の誰かとペアを組む事になったとしても、それは受け入れた。

 しかし辰哉は、千鳥が離れてく事はないと思っていた。彼が許す限り、辰哉は千鳥を己の武器として揮い続けるだろう。

 そして、彼が当たり前のようにそれを許す事を、心のどこかで信じ切っていた。

 傲慢だという自覚はある。けれど千鳥は、そんな辰哉をも許容して笑うのだ。

 千鳥が本心で何を望み、辰哉と共に在るのか。面と向かって聞いたことは無かった。改めて聞くには辰哉のプライドが邪魔をする。

 だから、せめて。今の辰哉から、千鳥に向けて言葉に出来る事があるのなら。


「俺と共に居てくれ、千鳥」

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白い花菖蒲の意志 ゆたか@水音 豊 @bell_trpg

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