交友は遥か嘗てより

 物心ついた時から、共に過ごすのが当然のようになっていた。

 その頃は苗字などという概念はなく、名前だけが互いを表す呼称だった。


 それがどういう切っ掛けで変わったのか、詳しい事は覚えていない。

 ただ、名前から苗字へと移したのは辰哉の方が先だった事だけは確かだ。恐らくは、思春期の故の慣れ合う事への羞恥や他者よりも高い自尊心がそうさせたのだろう。

 突然変わった呼称に、余程ショックが大きかったのだろう。最終的に臍を曲げた千鳥が「こっちだって同じように呼んでやるからな!」と幼い子供のような台詞を投げた。


 その後も交友関係こそ絶えず続いたが、呼び名だけは意固地になったように苗字のままで何年もの年月が経った。


「おい、縣」

「どーした、ナナチ」


 そう呼び合うようになってから、彼らには様々なことが起きた。

 千鳥の演奏に負った傷を癒された。

 星の騎士として願いの為に戦いに身を投じるようになった。

 掲げた願いは世界の統合だ。世界の崩壊に瀕し、欠片となってしまった世界を一つに纏め上げる。隣人と呼ばれる彼らを離れ離れになってしまった同胞達と引き合わせることが出来るなら。もしかしたら、顔すら覚えていない辰哉の兄とも、出会える可能性があるのなら。

 しかし。その過程で倒さねばならない巨悪に洗脳され、危うく世界を滅ぼしかけた。その代償に、願いを叶える力を失った。


 そして――。


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