白い花菖蒲の意志

ゆたか@水音 豊

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それは、大戦を目前に控えた日に見た夢だった。



 辰哉の目の前に、彼と同じか、あるいは僅かに背が高い体格の良い黒髪の男が立っていた。

 男は人好きのする、どこか人懐こい大型犬を思わせる笑みを浮かべながら辰哉に声を掛ける。

「頑張って」

 知らない人物の筈だった。しかし、辰哉の口からは自然に言葉が零れる。

「あぁ、そちらも。――」

 自然に、目の前の自分より少し明るい琥珀色の瞳をした男にそう告げた。

 男の事を何と呼んだのか。その記憶は辰哉には残らなかった。


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