第3話 謎の襲撃

 私の村は何者かに襲撃されているらしい。しかし、人々の慌てふためき逃げ去っていく声は聞こえるが,婦人の叫び声や断末魔が一つも聞こえない。その代わり、遠くの方から何かが炸裂する音だけが繰り返し何度も聞こえた。

 

 まず、家族が心配になったので私は一人で住んでいる小屋を抜け出し、兄と姉と母が住んでいる家へ向かった。逃げ惑う人々を掻き分け向かう。

家族の家にたどり着くと勢いよくドアを開けた。

 

 すると、中には荷物をあせくせとまとめている三人がいた。


「ああ、心配した、もしかしたらおいていかれているんじゃないかと思った」

そう、私が言うと母が、


「馬鹿な事言ってないで、あんた何も持ってないの?荷物はどうしたの?」

と。


「心配で」


「早く準備してらっしゃい」

そういわれて、急いで自分の小屋に戻った。


ちょうど、私だけで、近場の山の管理をしなければならず、山から一時も目が離せなかったので、麓の小屋に一人で住んでいたのだ。


 小屋に戻り、最低限の服の保存食と上衣をまとめて、小屋から持ち出す。その間も、やはり謎の炸裂音は定期的に聞こえており、更には先程よりも大きくなってきている様に思えた。

 

 それが、私の不安をますます高め、焦りが募り、家族の家まで向かう為に走る足が何度かもつれそうになった。


 何とか、家族の家の前までたどり着くと、既に荷物を持った3人が家の前で待っていた。


兄が 

「おっ、来たな、行くぞ」

と言うと、まばらな村人が向かって言っている方向へ早足で歩きだした。


足の悪い母への配慮である。私もそれに続く。兄を先頭にしてその隣に私が並び、母を挟み姉が続いた。


姉が口を開いた、

「走らなくて大丈夫なの?母なら、3人でおぶっていけば走れるし」


すると、兄は

「大丈夫だ、今回の襲撃はそんなに早くない、この鈴によると、どういう訳かまだ村の前の櫓も落ちてない」


「じゃあ、それって襲撃じゃなくない?」


「さぁ?恐らく村の近くで戦闘が起こっているんだろう、それで、略奪される前に早とちりして略奪だと言って非難してるんだろうよ」

そこまで、兄が言うと私は先日の市での出来事を思い出し兄に対して話はじめた。


「その戦闘ってもしかして、あの馬賊が圧されてたらしい新勢力とのじゃないか?」


「それは、そうかも知れないけど、じゃあ、その新勢力と戦っているのは誰だ?」


「この村と馬賊の勢力圏の間には、あの市の町があった、だがもしそうなら、この村が略奪される程近くで戦っているってなると」


「それだったら、既にあの町の防壁は突破されているな」

そう言われると、ウヌリスの身を案じ、様々な言葉が頭の中でぐるぐると廻ったので少々沈黙が続いた。


後ろから、姉が言う、

「この調子だと、結婚は延期かな、まだ、買ってもらった布、持ってってないし」


すると、母が、

「まだ、持ってってないのかい、もう買ってもらってから1週間はたってるっていうのに、今、ちゃんと布持ってるね?」


「持ってるよ、さすがにそこまで馬鹿じゃないよ」


そう言ってると、村を抜け、里山に入った。


そうして、歩いていると兄の腰に付けた鈴が、自然と、激しくなり始めた。


兄は顔色を変え、振り返った。


そこは、山の中腹でありちょうど木が茂ってない部分があってそこから村の全景が見渡せた。


「見ろ、村が、堕ちた」


兄の言葉にはいつものような軽さはなく、重々しい感じを纏っていた。

        



 ウヌリスは困惑していた。

 

 馬賊からの同盟の要求に対して、使者を袋に詰め馬に5度踏ませ、それを同盟への答えとして送りつけた。早急に降伏すれば町の奴隷階級兵士として、外敵からの攻撃を受けた際に、雇い、最低限の衣食住のみ保証する、と文をしたためよこし、相当困窮しているのかそれが通った。それから、6日後、馬賊から例の敵対勢力が進行してきたとの情報を受け、重騎兵300人、歩兵1000人と共に武装を整え戦場に赴いた。

 そこで、馬賊と合流し、はるか先の肉眼ではほとんど見えない敵勢力を、鷹に自身の血を飲ませ飛ばし、鷹の目から観察した。

 

 するとどうだろう、敵は、全員が、見たことのない同じ様な服を着て、多くが何か、鉄と木でできた筒の様な物を持っているのである。更には、不思議なことに誰一人として鎧を着ていなかった。

 

 この様な今までとは明らかに様子の違う奇妙な兵たちを見ると、ウヌリスは、今までの経験から嫌な予感がし、未知数である敵の攻撃方法と弱点を探るべく、重騎兵と馬賊を二分し、重騎兵に敵右翼前方を牽制させ、機動力のある馬賊を右翼後方に送り込ませようとした。

 

 こうして、戦闘はこちら側の先制攻撃で始まったのだ。戦場は平原であった。そして敵は横隊で進んでいた。


それが、まずかった。


 ウヌリスは鷹の目を通して、自ら送り込んだ重騎兵が唐突に、空気を振るう重圧な炸裂音とともに、倒れ始めるのを見た。

 

 だがしかし、そこはさすが騎士達。前列の30人程が倒れたが、倒れた味方を飛び越え突撃し続ける。


 しかし、再び絶え間なく熾烈な炸裂音が響く。また、騎士たちが倒れる。


 鷹の目を通して見る事にはその重圧な炸裂音はあの木と鉄の棒から出ているようだ。


 木と鉄の棒が凄まじい音と黒いもうもうとした煙を吐き出すと、我が兵は倒れるのだ。

 

 馬賊の方にも目をやると回り込んもうとした所で、同じ様に轟音と共に倒れていっていた。


 そうして、騎兵軍団による先制攻撃は失敗した。


 残存兵力は歩兵全員と重騎兵40人、少数の馬賊である。



 ウヌリスは騎兵突撃が未知の攻撃によって失敗すると、そのまま調子変わらず前進してくる敵への対処に迷ったが、一つ横隊には共通する弱点を知っていた。


 それは、側面である。どの様な密集隊形も側面からの攻撃が一番の脅威であるのだ。


 しかし、こちら側の機動力である騎兵は大幅に減少しており、とても側面に回りこめるとは思えなかった。その為、一旦撤退して騎馬と騎兵の補給を決めた。

その通り、補給の為の撤退は実行された。


 撤退先は町である。戦場は近く、周りに他の大きな町もなく、撤退先はなかったのだ。


 その為、撤退後は防衛戦を強いられる。町の防壁は完璧な物ではなかった。


 元々馬賊対策の為に急拵えされたものでありあの様な大軍団は想定されていなかったからである。しかし、攻城戦用の装備を持たない者を通さないには十分なものであった。

 

 そして、見た所相手にその様な大規模な装備は見れなかった。その為、ウヌリスは防衛戦での圧倒的有利を確信していた。


 しかし、現実はどうであったか。


 撤退した先の町でウヌリスが聞き、見た物は先程の戦闘の際の音とは比べものに慣れないほどの音と空気をきる不思議な音と次々に崩れていく建物であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る