第6話 ギャルの理由
彼女の住むマンションに到着した。
1Fはコンビニと不動産会社の店舗が入った今風のマンションだ。
エントランスに行くとオートロックのインターフォンがあった。
森野に教えてもらった部屋番号は803号室。
ポストも803号室にKAJIと書いてあるので間違いないはず。
でも、何て言って入れてもらえばいいんだ?
勢いで来てしまったけど、いきなり同級生の男子が来て入れてくれるものか?
と、エントランスでウロウロしていると
「あれ?小山内先輩じゃないですか?」
と梶弟が声を掛けてきた。制服なので学校帰りだろうか。
「姉貴は危ないから離れた方がいいって言ったのに・・・しりませんよ。
で、何か御用ですか?」
「あ あぁ 今日お姉さん学校休んだんでお見舞いとプリントを持ってきたんだ」
「えっ!姉貴学校休んだんですか?いつも俺より早く家を出るから、もう学校行ったんだろと思ってたんだけど」
「知らなかったんだ。じゃあ寝てたか一回出かけて戻ったかだね」
「ですね。とりあえず開けますんで一緒に来てください」
と弟さんの後についてエレベータに乗った。
「竜太郎君だっけ? 小学生くらいの時に川野辺の図書館にお姉さんと行ったことある?」
「え?川野辺の図書館? 姉貴が本読むのが好きで毎週通ってたから何度か一緒に連れてってもらったことありますけど。それが何か?」
『やっぱりそうか』
「その時、お姉さんの"お友達"にクレープご馳走になったことない?」
「はい。確かにそんなことあった気がします。姉貴って口下手で友達とか少なかったから、男の子の友達紹介されて驚いたんですよね」
「それ僕だよ」
「へぇ~そうなんですねぇ・・・・・って えええ!!小山内先輩だったんですか?姉貴と友達?」
中々にいいリアクションだ。
「あ、8F着いたよ」
「ちょ ちょっと待ってください。じゃぁ先輩は姉貴と最初から知り合いだったんですか?」
「そういうことになるね。ただ、僕の知ってる麗香ちゃんは"加納"って名字だったんだ。それに外見も全然違っちゃってたから最初わからなかった」
「まぁ気付けって方が難しいですね。確かに・・・でも、それなら姉貴が先輩に好意をもってる理由わかります」
好意を持ってる理由?
ガチャ。803号室の鍵が開けられた。
「散らかってますが、どうぞ」
「あぁ」
と家の中に入る。電気はついてない。
と、玄関近くのドアの前でドアをノックする竜太郎君。
「姉貴居るのか? 学校休んだって聞いたけど大丈夫か?」
返事がない。寝ているのか居ないのか。
「入るぞーー」
とドアを開く。
そういえば、女の子の部屋に入るのって何気に初めてだな・・・
ギャル風な外観とは異なるシンプルで簡素な部屋。
ただ、壁際の本棚にはたくさんの本が並んでいた。本が好きなのは変わらないみたいだ。そして、ふと机を見ると僕の写真が飾られていた。
ちょっと照れるというか、あれ確実に隠し撮りだよな・・・
そしてベッドには、やや幼さが残る顔で眠る麗香ちゃんが居た。
メイクをしていないかわいい寝顔に見惚れていると
「こっちの姉貴が素の姉貴です」
と竜太郎君が語りだした。
「え?」
「姉貴は口下手でコミュニケーションが下手だし外見も地味だったから、東京の学校に転校した後、中々友達が出来なかったんです。
それで、姉貴なりにクラスの女子のファッションやメイクを見て勉強したり、東京の人気スポットの情報集めて話題作りしたり色々頑張って、今の感じになったんです。ああいう恰好当時流行ってましたし。」
「そうだったんだ・・・」
「結構 人前でも自信持てるようになって、街中でスカウトされて読モとかもやってたんですよ」
モデルの話は言ってたな。
モデルをすることが自分の自信につながってたのかもな。
「ただ、去年こっちに戻ってきたんですけど、こっちだとあの恰好は逆に目立つし奇異に見られちゃうんですよね。それでまた少し内に籠っちゃってたんです」
確かにこの町にギャルはほとんどいないからなぁ・・・
「でも、新学期が始まったころだったかな。姉貴が珍しくうれしそうな顔して帰ってきたんです。『どうしたの?』って聞いたら『見つけたの』って。
今思うとクラス発表に先輩の名前を見つけたんじゃないですかね。姉貴は2年生の時に編入してるから、先輩が同じ学校に居ることとか知らなかったんだと思います」
確かにクラス替えで生徒全員の名前が張り出されるしな。
僕は"梶 麗香"って名前見ても"加納 麗香"は連想できないもんなぁ
「色々ありがとうな。明日お姉さんが学校来れるようなら少し話ししてみるよ」
「あっ起こしますよ折角来てくださったのに」
「いや いいよ。具合悪いんだろうし気持ちよさそうに寝てるからね」
「・・・そうですね。それじゃ明日よろしくお願いします。先輩が話しかけてくれれば姉貴も喜ぶと思いますので」
「そうなるといいんだけど。。。あ、このプリント渡しておいて」
と僕は梶さんの家を後にした。
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