第4話 昔話

今でもそうだけど、僕こと小山内源は本が好きだ。

普段の僕は地味だし運動も得意ではないし顔がいいわけでもない。

成績はそれなりに良かったと思うけど、それだけの男だ。

でも本の世界では色々な冒険やミステリー、ラブロマンスがあふれている。

本を読んで空想している間は、僕も物語の主人公になれる。


小学校の頃からよく図書館にも通っていた。

少し遠かったけど、隣町の川野辺にある図書館は本の種類も規模もこの辺りでは

一番大きくお気に入りの場所だった。

そんな場所で僕は彼女に出会った。


始めて出会ったのは小学校6年生の頃の暑い夏の日。

僕はいつもの様に本を借りてテーブル席で読んでいた。

図書館のエアコンが心地いい。

この時、向かいのテーブルに僕が読んでいるのと同じシリーズのライトノベルを読んでいる女の子が居た。

長い黒髪を三つ編みにした、物静かな感じの可愛い女の子だった。

何となく目が合うことが数回続き、挨拶をかわすようになり、いつの間にか本の話しをする間柄になった。

彼女は加納麗香と名乗った。歳は同じだったけど、小学校は違かった。

彼女も人見知りするタイプで友達は少ないらしく、最初は戸惑っていたけど僕と小説の話が出来るのを楽しんでくれるようになっていた。


季節は巡り、中学生になってたからも僕と彼女の本を通じた友達関係は続いていた。ただ、お互い通っていた中学が違かったので会えるのは図書館のみ。

でも僕はいつしか彼女の笑顔に惹かれ恋心を抱くようになっていた。

今思えば初恋だったのかもしれない。


中学1年のクリスマス前。

粉雪が降る中、いつもの図書館の入り口で僕は彼女に告白した。


「麗香ちゃん好きです。僕と付き合ってください」


今になって思うとなんの捻りもないストレートな告白だったけど、コミュニケーション下手な僕としては頑張った告白だった。

それだけ彼女の事が好きだったんだな。

僕の告白に彼女は、嬉しいような悲しいような顔で


「ありがとう」


と言ってくれた。ただ『返事は少し待って』とも言われた。


彼女はそれ以来図書館に来なくなった・・・・・


--------------

でも あの子は"加納"って名乗ってたよな。

僕の前に現れたのは"梶"。

だけど恩田さんが見せてくれた中学の時の写真は確かに"麗香ちゃん"だった。

数年前とはいえ初恋の子は印象に残っている。

いや、もしかしたらまだ僕は"麗香ちゃん"の事が忘れられないのかもしれない。


だけど・・・・・僕は、あの時やっぱりフラれたんだよな。

それとも何か理由があって図書館に来れなくなったのかな。


考えても理由はわからない。

そして、昔のイメージとはかなりのギャップがあるあのギャルっぽい恰好・・・

図書館に来なくなってから今までの彼女に何があったんだろう。


明日恩田さんに昔の話し聞いてみるかな。

それとも梶さんが来たら直接聞いてみようかな。



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