第2話 弟君
神奈川県某所川北町のバスターミナル脇にあるマンション最上階。
リビングのテーブルに向かい合わせで座る男女。
「で、その小山内って男は、人の心を読む能力者ってことでいいのか?」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「んなわきゃないでしょ!どこのラノベよ。普通の高校生よ!この中二病が!」
と見た目ギャルな女。
「んじゃわかるわけないだろがバカ姉貴!
『私あなたの事好きなんだけど、あなたは私の事どう思ってる?』
をどうやったら『あたしってどう?』に省略できるんだよ!
『どう』しか被ってないだろが!
そりゃ小山内とかいう先輩の『意味わからないっす』が正解だよ!」
「そ そりゃ乙女の恥じらいというか、そんなストレートに話しかけられるわけないじゃない!
あ、でも意味理解してもらってなかったんなら、私ってまだフラれたわけじゃないんだよね!そうだよね!」
「あ~ 何てポジティブシンキング!」
「何よ!あんたこそ、ダサダサな昭和の不良スタイルいつまでやってるのよ。付き合わされる古川君たちが可哀相よ!」
「うるせぇ!カッコいじゃないか」
「何処がよ!ダサ竜太郎!あ~もう明日もまた昼休み小山内君のとこ行って今度こそ誘惑しちゃお♡」
と笑顔で部屋に帰っていくギャル姉貴。
帰ってくるなり不機嫌そうに"フラれたかも"とか言うから話を聞いてみれば・・・
弟の俺が言うのもなんだけど、ギャルメイクしないで普通にしてれば結構な美人だと思うし、それに人見知りが拗れてというかしゃべると色々残念なんだよな。
会ったことないけどバカ姉貴に惚れられた可哀相な小山内先輩。
悪いけど、顔だけは良いと思うんでかまってあげてください。
そしてよかったら彼氏にでもなって一生面倒見てあげてください。
俺は面倒なんで絶対に関わりません!
・・・さて、読みかけの漫画でも読むかね。
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翌日。
姉弟で同じ高校に通っているといっても一緒に通学はしていない。
ああみえて姉貴は結構真面目で早い時間に学校に着くように家を出て教室でその日の授業の予習をしている。何気に成績は結構良いんだよな。
ちなみに俺の成績は中の上くらい。学校へは始業ギリギリに到着している。
が、俺がリビングに行くと、何故か姉貴がまだ家に居た。
「珍しいな姉貴がこの時間に家に居るなんて」
「ふふ 昨日は小山内君とのデートプランを色々妄想してたら中々眠れなくて、小山内君って見かけによらず強引なんだもん♡」
「・・・・・」
怖いよ姉貴。いろんな意味で怖いよ。
まだ付き合っても無ければろくに話もしてないんだろ。いったいどんな妄想してるんだよ。"強引なんだもん"ってなんだよ。
昨日は"かまってあげて"とか思ったけど、小山内先輩は逃げた方がいいかも!
俺は朝食も食べずに着替えて学校に向かった・・・・
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学校へ着くと俺は自分の教室には行かず3年生のフロアに向かった。
そして3年A組にて小山内という先輩を呼び出してもらう。
見た感じ普通の地味な人だ。少なくとも人の心は読めないだろう。
「初めまして。2年C組の梶 竜太郎と言います」
「梶君 梶? 多分初対面だよね」
「はい初対面です。
・・・実はうちのバカ姉が昨日の昼休みにご迷惑を掛けたかと・・」
「・・・あぁ えぇと麗香さんだっけ?の弟さん」
「はい。実はその麗香なんですが、どうも先輩の事好きらしくて」
「はぁ?好きってなんで。僕昨日はじめて会ったんだけど」
「俺も理由は知らないです。ただ、うちの姉って変態なのでちょっと拗らせると
危険です」
「き 危険?」
「はい。とりあえず忠告はしましたからね!気を付けてくださいね!!
そして、俺の事は恨まないでくださいね!!!」
よし!言うだけは言った。
「では失礼します!」
じゃ授業も始まるし教室に帰るかな。
「姉弟揃ってなんだんだ・・・・」
ぼそっと小山内先輩がつぶやいていた。
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