第17話 夏休み -夏祭りと・・-
本日1:00に続いて2本目の投稿です。午後、最終話も投稿します。
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川野辺天神祭り
川野辺天神は川野辺駅から徒歩20分弱。清水や村田が通っていた川野小学校の裏山にある小さな神社だ。
社と社務所があるだけの小さな神社だけど、お盆の時期には、参道脇の広場で盆踊りや夜店、花火大会なども行われ賑わうらしい。
特に最近は縁結びの神様として雑誌などに掲載され若い女性の隠れた人気スポットにもなっているんだそうだ。
そんな祭りに行くため、俺は今川野辺駅前に居る。
ここで清水や浜野さん、それに村田と待ち合わせし神社まで移動する。
祭りに向かう人で混雑する駅前。
少し待っていると清水と浜野さんが到着した。
「悪い!待たせたか?」
「いや、少し早く来過ぎたから平気だ」
清水は、Tシャツにジーンズ。浜野さんは白のブラウスにスカートと二人とも夏らしいシンプルで涼し気なコーデだ。
「村田はまだか?」
「あぁさっき少し遅れるかもって連絡があった」
と数分待つと
「お待たせ~」
と走ったのか少し息を切らしながら村田が到着した。
「おっせ~ぞ・・・・」
と言った俺の前に立つ村田は、淡い青を基調に花の絵柄をあしらった浴衣を着ていた。恥ずかしながら一瞬見惚れてしまった。。。
「ど どうかな?福島君・・・福島くん?」
「・・・・」
やばい。何言っていいかわからない・・・
「綾ちゃんが可愛くて見惚れちゃったんじゃないw
というか本当可愛い!!私も浴衣着てくればよかった!」
「み 見惚れてって本当福島君?」
「え、あぁ可愛いというか綺麗で似合っててビックリした・・」
「おっ福島も言うねぇ~」
「あああ、ありがとう」
俺に予想外に褒められたからか村田も耳まで赤くしてる。
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駅前は神社近くまで行くバスを待つ人で混雑しているが、俺達はのんびりと歩いていく予定だ。清水が言うには神社に行く途中のお店もお祭りに合わせて露天を出してたりするのでそれも面白いとの事だ。
清水や村田からこの辺りの話や小さい頃遊びに行った場所の話などを聞きながら神社へ向かう。俺も引っ越してきたばかりだけど、浜野さんも隣町の中学に通っていたのであまりこの辺りは来たことがなかったそうだ。
少し歩いていると自然と浜野さんは清水の横に並び手を繋いで歩きはじめた。
まぁあいつ等は付き合ってるしな。
そして、俺の横には浴衣を着た村田が居る。
普段の村田も可愛いと思うけど、今日の村田はお世辞抜きに可愛いというより綺麗だ。何というか周りから視線を受けるレベルでだ。
そんな雰囲気というか村田の浴衣マジックのせいなのか、俺は右側を歩いていた村田にそっと手を差し出していた。
「い 嫌ならいいけど・・・」
「・・・・」
村田は何も言わずに俺の差し出した手をそっと握ってきた。
村田も顔赤かったけど、多分俺も照れて真っ赤だったと思う。
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祭り会場は大盛況で、盆踊り会場の他に沢山の屋台やイベントが行われていた。
夕方でお腹も空いていたこともあり、まずは皆で夜店グルメを堪能した。
「夜店のお好み焼きとか焼きそばってなんでこんなに美味しいんだろうね」
「やっぱり、その場の雰囲気とかもあるんじゃないかな」
と浜野さんと清水。
職人さんの腕もあるかもしれないけど、確かに美味しく感じるんだよね。
「確かに雰囲気とかはあるよね」
とベビーカステラをつまみながら村田。
何だかもごもごと食べる姿が小動物っぽくて可愛いな。
「ん?今何か失礼なこと考えてなかった?」
「い いや食べてるところも可愛いなと思っただけだよ」
「ふぇ きょ 今日の福島君何だかおかしいよ!」
と照れたのか横を向いてしまった。
何だか清水と浜野さんが俺達を見てニヤニヤしてる・・・
うん 気にしないことにしよう。
食事の後は、花火まではまだ時間があったので、待ち合わせ場所を決めて自由行動となった。清水は浜野さんを連れて夜店が並ぶ人ごみの中に消えていった。
「俺達はどうする?夜店に行く?」
「・・・・ちょっと歩くけど神社に行かない?」
そういえば、清水が地元なら幼馴染の村田も地元で詳しいよな。
「いいよ。案内は任せる!」
「了解しました!」
とちょっとふざけながら人ごみを離れ祭り会場脇の参道を歩き高台にある神社へ向かった。
祭りにあわせて参道や社もライトアップはされていたけど、お祭り会場に比べると人も疎らで、少し寂しくも感じる。
そして、高台にある神社の境内に入ると眼下に町や祭り会場の明かりが見えた。
「静かで眺めも良いし、いいところだな」
「ここね、楓にとって大切な場所なんだ」
「小早川の?」
「うん。福島君って田辺君の事知ってたっけ?」
「あぁ小早川の好きな奴だろ?前に清水から聞いた」
確か引っ越したってやつだよな。
「楓ってね。小さい頃結構お転婆だったんだけど、お母さんと喧嘩して
家を飛び出したことがあったんだって。
でも勢いで飛び出したものの行く当てもなくて、歩いてるうちに迷子
になっちゃって行き着いたこの神社だったんだって。
で、夕方近くなって暗くなってきて怖くて一人で泣いてたら、田辺君
が見つけてくれて。
その後、二人で帰ってお母さんにも一緒に謝ってくれたんだって」
「へぇ そりゃ小早川も田辺ってのに惚れるわな」
「うん。でね来る途中清水君が言ってたと思うけど、ここの神社って、
縁結びとか恋愛の神様で、男女のカップルで訪れると末永く結ばれるん
だって。
だから、田辺君が引っ越して離れ離れになっちゃったんだけど、いつか
戻って来てくれる。また自分を見つけてくれるって信じられるんだって」
なんだか、ちょっとロマンチックというか良い話だな。
ん?村田?
横に居る村田が、俺の正面に移動して目を見つめてきた。
「だから・・・・私も好きな人が出来たら一緒に来たいと思ってたの」
「え?村田それって」
「・・・ふ 福島君 好きです。私と付き合ってください」
「・・・・・」
「・・・ダメ?」
しばしの沈黙の後、俺も自分の思いを告げた。
「バスケ部で初めて会った時から可愛い子だとは思ってたんだ」
「え?」
「で、同じクラスになれて"ラッキー"とか思ってたけど、村田の周りはいつも
他の男子でいっぱいだし、俺に対してもあたりが強いし、正直あの頃は少し
距離をおこうと思ってた。
でもな、一緒にバイトや部活で過ごし、今日一緒に祭りに来て思ったんだ。
やっぱり俺は村田 綾子が好きなんだって」
「・・・・・!」
「俺からも言わせてくれ、村田、いや綾子俺と付き合ってくれ!」
「うん!うん!太一君・・・」
綾子は俺の名前を呼びながら抱き着いてきた。
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