第16話 夏休み -夏祭りの誘い-

部活とバイトに明け暮れた夏休みも早いもので1か月。

あと少しで夏休みも終わりだ。

お金もだいぶ溜まってきたので何処に遊びに行くか考え始めたころ、清水から夏祭りの誘いを受けた。


「福島は今年引っ越してきたから知らないと思うけど、8月のお盆時期に

 この地区では川野辺天神で結構大きいお祭りがあるんだよ。

 屋台もたくさん出るし花火大会とかもあるんだけど行かないか?」

「いいねぇ でも二人ってことはないよな?」

「あぁ俺は美玖を連れて行くつもりだ。お前も村田誘えよ」

って予想通りではあったけど、俺は村田と付き合ってるわけじゃないぞ。

あいつ結構可愛いし、地域の大きな祭りなら一緒に行きたい奴の1人や2人居るんじゃないか?そりゃ一緒に行けるなら俺も嬉しいけど。


「う~ん 清水と浜野さんの邪魔はしたくないけど、

 村田も一緒に行きたい奴とかいるんじゃないか?」

と清水が少し顔をしかめ

「いや ちょっとまて!前にも言っただろ村田はお前の事好きだって。

 誘えば確実に喜ぶぞ(忘れてた、こいつも結構な鈍感男だった)」

そういえば、確かに清水に言われたような気もするな。

でもなぁ、、出会った頃に比べて口調も柔らかくなったし会話もするようになったと思うけど、他の男子に比べて俺への口調ってまだ結構きついんだよな。


「わかった。明日もバイトだから話してみるよ」

「あぁ。結果わかったら教えてくれ! 」

ということで、いったん返事は保留。

村田を誘ってみることになった。


村田酒店でのバイト。当初は夏休み中の1か月としてお願いしていたんだけど、勉強や部活に支障が出ないレベルで今後も継続することになった。

男手が少ないとおやっさん(店長さん)に頼まれたということもあったけど、俺としても自分の遊ぶ金くらいは自分で稼ぎたいし、親にあんまり負担も掛けたくないからね。


-----------------------

で、バイト。

今日は、倉庫で臨時の棚卸だ。

この時期BBQ等でビールや各種飲料の出荷が多いので一旦棚卸をして不足しそうな商品の発注を行うことになったんだ。

倉庫の端から、商品の数をチェックしノートパソコンのExcelにデータをひたすら入力する地味な作業。でも、こういうのは嫌いじゃない。

それに倉庫はエアコンも聞いてるし、外で配達してるよりは結構快適だったりもする。


「ふぅ~やっと半分か。何とか今日中には片付けられるかな」

と一休みしていると、村田が麦茶をもって倉庫に入ってきた。


「折角差し入れ持ってきたのにサボってるの?」

「酷いな。。。半分終わって一休みしてるところだよ」

流石に休憩なしで2時間近く頑張ってきたのにサボりと言われるとイラっと来る。


「じょ 冗談よ お茶とお菓子持ってきたから食べてね」

「ん。ありがとな」

と少しムッとした口調でお礼を言ったが、村田はお菓子の入った器を棚の上に置き俺の横に座って持ってきたお菓子を食べ始めた。

妙に距離が近いんだけど・・・

やっぱり、こいつ俺の事好きなのか?

清水にあらためて言われたので変に気になってしまう。

が、当の村田は俺の気持ちも知らずにお菓子を食べながらスマホを弄ってる。

この際、ダメもとで聞いてみるかな。


「なぁ村田」

「ん?なぁに?」

「清水から来週大きな祭りがあるから一緒に行かないかって誘われたんだけど、

 よかったら俺と一緒に行かないか?」

「ふぇ わたしと?」

何やら驚いたのか食べていたお菓子を落とし、慌てて俺の方を見てきた。

毎回思うけど、見つめられると凄く可愛いんだよな。村田って。


「あぁ他に一緒に行きたい人とかいるなら無理しなくても良いけど、

 清水は浜野さんと一緒だし、俺も誰か誘う様に言われてな」

「大きな祭りって川野辺天神祭りだよね。

 う うん行く!他に一緒に行きたい人とか居ないから大丈夫!!」

「そ そうか。じゃあ清水にも連絡しとくから集合場所とかはまた連絡するな」

「うん!」

何だか凄く嬉しそうだけど、もしかして俺と行けるのがそんなに?


ちなみに後から清水に聞いた話だけど、川野辺天神は縁結びの神様で、お祭りにカップルで参加すると片思いなら思いが成就され、両想いならその想いがより強固になるという都市伝説的な話があるらしい。

ということで祭りはカップル率が高いんだそうだ。

清水曰く、村田が嬉しそうにしてた理由も俺に誘われたということで、、、

そういう意味らしい。

っかそういうことは先に言ってくれ清水!!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る