第11話 酒屋の村田さん

「福島!」

小宮さんからのパスを受けた俺は、ゴール下に切り込んだ。

そしてマークが寄ってきたところでニアに走りこんできた木本先輩にパス。

[シュパ]

綺麗なスリーポイントが決まった。

「木本先輩 ナイスシュー!」


予選3回戦。今日は雪村先輩は温存で、2年の北島さんと俺がPGとして出場していた。練習試合と違って公式戦はやはり緊張するな。


「木本リバウンド!」

ゴール下。2年森野先輩のシュートがリングに弾かれた。

木本先輩が弾かれたボールのリバウンド勝負を制し、走りこんできた俺に素早くパスを出した。

俺はボールを受けそのままレイアップシュートを決めた。


「ナイスシュー福島くーーん」

ん?女子の応援?

と今日は先に試合が終わり4回戦進出を決めた女子バスメンバが応援に来ていた。

『今の声 村田か?』


「おっ彼女の応援かw」

「森野先輩違いますよ・・・」

普通に女子の応援とか照れるわ


その後も木本先輩と森野先輩を中心に得点を重ね快勝。

この日は主力の俺の他に由良や長谷部ら1年含め若手メンバも多数出場出来た。

次の4回戦は前回決勝進出を阻んだ森下学園高校。多分総力戦になるけど、ここで勝たないと清水との約束は果たせない。

何としてでも勝たないとな。


------------------

試合後、着替えて外に出ると村田と小早川、それに清水と浜野さんが来ていた。


「清水!見に来てたのか!」

「あぁ今日のプレーは凄かったな。

 随分差をつけられた気分だけど負けないからな」

「で、どうなんだリハビリは」

「いい感じだぞ。痛み止めは飲みながらだけどハーフタイムくらいなら全力で

 走ったりできるくらいにはなった」

「やっぱり痛み止めとかは必要なんだ」

「そうだな。まぁ保険って意味合いもあるけどな。念のため飲んでるんだ」

なるほどな。確かに試合途中で急に痛み出しても困るからな。


「ところで部長たちは、まだ中か?ちょっと挨拶してくる。

 疲れてるだろうし先に帰ってていいぞ」

「あぁ。悪いな今日は先に帰るわ」

今日は、公式戦初デビューだったこともあり正直疲れた。

特に雪村部長のポジションを任されるわけだしな。緊張感が・・・


「ん?村田と小早川は清水と行かないのか?」

「え?わ 私は福島君と一緒に帰ろうかと思って・・・」

「あ、私はちょっと寄るところあるから別行動ね。 ばいば~い」

「ちょっと!楓!」

と小早川は校舎の中に行ってしまった。

取り残されたのは、俺と村田。


「か 帰ろっか・・・」

「あ あぁ・・・・」


校門を出て駅方面へ歩く。

俺の家は駅前の踏切を越えて10分くらい歩いたところだ。


「そういえば、村田も家は同じ方なのか?」

「うん。踏切わたってすぐの酒屋だよ。村田酒店」

「えっ あの店村田の家なんだ。俺親父用に何度か買いに行ったことあるぜ」

「そうなんだ。お買い上げありがとうございます♪」


「最近は、なんか俺とも普通に話ししてくれるんだな」

「あ、、、、今までゴメンね。

 何だか福島君と話すと緊張しちゃって・・・

 その・・・何ていうか思った事言えなくなっちゃうんだよね。

 変だよね私・・・」

「そうなんだ。でも俺って緊張する要素あるのか?」

「そ その好きな男の子だと思うと・・・」

「え?」

何だか声が小さかったけど"好きな男の子"とか言わなかったか?


「ご ごめんなさい何でもないです 何でも」

「あぁ。まぁいいか」


「おっ踏切が開いたぞ」

と電車が通過した踏切を渡り少し歩くと村田酒店が見えてきた。

さっきの村田の言葉が何だか気になる。

ただ、聞き間違いの勘違いだとするとダメージも大きいので悩ましい。


「じゃあまた月曜日」

「うん。また」







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る