第10話 予選開始

6月中旬。

清水はまだリハビリ中だが、いよいよ県大会の予選が始まった。

川野辺高校は昨年ベスト4に入ったと言うことで、1回戦はシード扱い。

試合は2回戦からだ。


「落ち着いて練習の成果が出せれば勝てる。気合入れてけ!」

「「おお!!」」


コーチの激を受けレギュラー陣がコートに出る。

部長の雪村さんをPGにおいて、得点力の高い3年の木本先輩と吉竹先輩。それに守りを得意とする2年の小宮先輩と畑先輩のコンビがスターティングメンバーだ。

審判の笛を合図に、先輩たちがコートを走る。


雪村先輩の正確なパス回しに木本先輩のスリーポイント。

同じチームの先輩ながらに見惚れてしまう。前大会ベスト4は伊達じゃない。

終わってみれば20点差近くつけての勝利。


「お疲れ様でした!」

「おぅサンキュ」


先輩方にタオルとドリンクを渡す。俺も早くコートに立ちたいな。

ちなみにこの日は、女子も別の体育館で予選だったけどこちらも勝利。

川野辺高校としては幸先のいいスタートだ。


女子といえば、最近村田が絡んでこないな。

教室でも他の男子たちとは盛り上がってるけど俺の方には来ない。

まぁ今はそれどころじゃないし、どうでもいいけどな。


-------------

「よーし今日の練習はここまで!

 明日も試合だから今日はゆっくり休めよ」

「「はい!」」

2回戦を突破し、翌週は3回戦。

体育館は他の部活も使うので週3回しか使えない。

そのため、大会期間中は練習も普段より少し長めの時間で行っていた。

夏場とはいえ少し外も暗くなってきていた。

明日も試合だし早く帰って寝るかね。


「ふぅ疲れた・・・」

「そうか、俺はまだまだいけるぞ」

「福島・・・お前の体力が異常なんだよったく」

と由良。最初は嫌な奴かと思ってたけど、ちょっと性格がひねくれてるだけで、根は結構いいやつだった。


「そういえば、清水は大丈夫なのか?」

「あぁ。昨日電話で聞いた限りは順調みたいだぜ。

 最近は走ったりすることも出来るみたいだ。ただ、完治するわけではないから

 決勝に行けたとしてもフルタイムはきついらしいけどな」

「それだけで十分だろ。というかそもそも俺ら1年が出れるかも微妙だしな」

「まぁそうだな」

と前の方を見ると、下駄箱のところに村田が居た。


「おっ村田じゃん・・・・・」

と俺と村田を見て「なるほどねぇ~」と何かうなずいている。


「福島!俺忘れ物したから先に帰っててくれ!じゃな!」

と由良は体育館へ戻っていった。

「お おい!」

何なんだ・・・


「ふ ふくしまくん・・・」

「よぉ クラス同じなのに何だか久々だな。どうかしたのか?」

「あ あの、一緒に帰らない? 確か家の方向同じだよね」

「えっ あぁ構わないけど」

今日は女子の方が先に練習終わったよな。

もしかして俺の事を待ってたのか?


「あのさ、清水君に約束したんだって?決勝に行くって」

「え!清水に聞いたのか?」

「う うん」

「あれ、後から考えると結構恥ずかしいセリフだよな」

「そ そんなことないよ。私カッコいいと思った!!」

「え!」

村田は少し赤くなり俯いてしまった。

『今 俺カッコいいとか言われた?』


「そ そういえば、村田は清水に会ったりしてるのか?」

「学校では見かけるけど、今はリハビリに打ち込んでるみたいだから遠慮してる」

「そか。浜野さんが付きっ切りなんだよな。浜野さんも大変なんじゃないか?」

「そうだね。浜野さんも大変だと思うよ。

 でも浜野さん、清水君の事が好きみたいだし苦にならないんじゃないかな」

「やっぱりそうなの?」

「うん。前に浜野さんに聞いたんだけど好きみたいだよ」

「そうかぁ~ 清水ってモテるよなぁ~」

と何故か少し村田が拗ねている


「ん?どうした?」

「福島君も浜野さん見たいな可愛い子が好きなの?」

確かに浜野さんは中学でバスケ部主将だったというけど、フワフワした感じの可愛い系の女子だ。でも俺は・・・

「んーーー。どっちかっていうと村田みたいな感じの方が好みかな」

「ふ ふぇ?わ わたし」

と面白いくらいに村田の顔が真っ赤になった。

「か からかわないでよ!ほ 本気にしちゃうぞ」

「別に嘘とかじゃないぞ」

「・・・・・・・」

「ん?どうした?」

「・・・また明日!!」

と顔を赤くしたまま、走り去ってしまった。


何だか面白いよな村田って



******************

10話位で終わらせる予定でしたが、もう少し続きます。

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