第9話 二人三脚

俺のリハビリは福島たち部活のメンバとは完全に別メニューだ。

浜野さんが病院の先生と相談し1か月で復帰できるようなメニューでスケジュールを組みなおしてくれた。


退院から1週間。

みんなが練習するコートの脇で、俺はメニューに従い筋トレや座った状態でのパスや上半身だけでのフェイントの練習を行っている。

こういう練習をしていると足が使えないことの不自由さをあらためて実感する。

一応杖なしでもゆっくりなら歩けるようになったけど、まだ無理は出来ない。

早く治して、普通の練習に参加したいと気持ちばかり急いでしまうが、無理をして悪化させたら元も子もないしな。


「清水君。疲れてないですか?足は痛くない?大丈夫ですか?」


パス出しや筋トレの補助をしながら浜野さんが色々と心配をしてくれる。

本当浜野さんには感謝だ。

正直、浜野さんは俺の好みのタイプだったし一緒に居て益々好きになってしまった。ただ、今の俺には恋愛している余裕はない。

村田と福島の件も最近は放置気味だ。

(というかこの件は、俺が何とかしなきゃダメなのか?)

今は、浜野さんに報いるためにも、早く足を治さないと。


---------------------

病院のリハビリ科の先生に無理を言って、清水君のメニューを考えてもらった。

そのメニューに回復度に見合ったバスケの練習を組み込む形でスケジュールを組んだ。

私は駄目だったけど、清水君は先生からもバスケに復帰できると言われている。

好きなバスケを諦める。こんな辛い思いはさせたくない。


中学1年の時、練習試合で川野中のバスケ部がやってきた。

その時に初めて清水君を知った。

当時バスケを始めたばかりだった私は、練習についていくのがやっとで、雑用ばかりしてたけど、1年生ながらに上級生に交じりコートを走りシュートを決める清水君はカッコよかった。多分一目惚れだ。

学校も違うし、奥手だった私は告白なんて当然のごとく出来なかったけど、1年生同士の試合で、清水君と仲がいい村田さんと小早川さんと友達になれた。

私より全然上手かったけど、二人もバスケを始めたばかりらしく意気投合したんだ。最初は二人のどちらかが清水君の彼女かと思ってたんだけど、話しを聞くと全然そういう関係ではないらしい。

もしかしたら私にもチャンスが!などと思っていたけど、想いを告げるようなイベントもなく、3年の時には交通事故にあって頑張ってきたバスケも出来なくなってしまったりと色々残念な形で中学3年間は終わってしまった。


高校に入学し、大人しい自分を変えようとメガネをコンタクトに変えて髪型も少し変えた。中学からの同級生には割と評判も良かった。

バスケが出来ないならと、部活は料理部に入った。元々料理は好きなのです。

そして、中学のバスケ部でお世話になっていた恩田先輩に料理部で作ったクッキーを差し入れに体育館に行ったとき、清水君を見つけた。

『同じ高校だったんだ!』

久しぶりに見た清水君は、さらにカッコよく見えた。

『告白、、してみようかな』

等と思っていた時に事件は起きた。清水君が急に倒れたんだ。

足を抑えて、うずくまる清水君を見て思わず悲鳴を上げてしまった。

清水君が担架で運ばれるのを見送り恩田先輩のところに向かった。

清水君にはバスケを続けて欲しい。

私みたいにはなってほしくないと思って。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る