第4話 約束と雨
翌日。朝練の時にコーチが来て清水の容態を伝えてくれた。
完治すれば問題なくバスケは出来るが、全治1か月で今週末まで入院。
来週から学校には来るが当面はリハビリが必要との事。
時期的に夏の大会は無理かもしれないみたいだ。
あんなに頑張ってたのに・・・・
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放課後。
今日は部活も無いので、清水の見舞いに行くことにした。
入院先は俺の家からも近い総合病院だ。
受付をして病室に入る。広い6人部屋だけど今は部屋に清水1人だけみたいだ。
「よぉ!体調はどうだ?」
「え?福島。もしかして見舞いに来てくれたのか?」
「まぁなんだ家が近いからな」
あらためて思ったけど数日で退院するのに見舞いは大げさだったかもな。
痛めた右足以外は特に異常も無いという事で、食事も出来るし松葉杖を使えば
病院内も歩き回れるという事で血色も良かった。
ただ、やはり怪我はショックだったみたいだ。
「あ~あ せっかく頑張って練習してきたのにな・・・」
「慰めにならないけど、次の大会までに万全のコンディションにすればいいじゃないか。バスケが出来なくなるわけじゃないだろ?」
「まぁそうなんだけどさ。雪村先輩たちとはこの大会が最後だろ?
俺、あの人のプレー見てこの高校に進学決めたんだ。だからさ・・・」
「・・・・そういえばそうだったな」
「・・・・」
「リハビリは1か月だっけ?」
「あぁ そうだな」
「・・・よし。決勝まで残りゃ何とかなるよな」
「え?」
「だから県大会決勝まで行けば、お前も出れるだろ」
「そりゃそうだけど・・・」
「俺たちで決勝まで勝ち上がる。
お前はリハビリに集中する。シンプルじゃないか」
「・・・やっぱり福島は面白いな」
「去年はベスト4なんだから、優勝狙えるだろ?」
「ああ、そうだな任せたぜ!」
その後、しばらく雑談をしたが、あまり長居するのも悪いので病室を出た。
窓の外を見ると雨が降り出していた。
「天気予報外れたな・・・売店でビニール傘でも買うかな」
売店で買ったビニール傘をさして、自宅に向かって歩いていると雑居ビルの軒先で小早川と村田が雨宿りをしていた。
方向からして清水のところに見舞いに行くんだろな。
昨日の村田の泣き顔が何となく気にかかったので声を掛けてみた。
「よぉ 清水の見舞いか?」
と村田を一瞬見た後、小早川が話しかけてきた。
「うん。病院行こうと思ってたんだけど急に降り出したから雨宿り中」
おしゃべりな村田が返事をすると思ってたけど、まさかの小早川。
もしかしたら小早川とは会話するの初めてかも。
「そか。俺も今行ってきたところだ。思ったより元気そうだったぜ」
と俺は持っていた傘を小早川に渡した。
「え?」
「雨しばらく止まないと思うぞ。
早くいかないと面会時間終わっちまうだろ。この傘やるから行ってやれよ」
「でも、福島君が濡れちゃうじゃない」
「俺んちこの近所だから走ってけば大丈夫だ」
「綺麗どころなお前らが見舞ってあげれば清水も喜ぶだろ。じゃよろしくな!」
と傘を半ば無理やり渡し俺は自宅へ向かって走り出した。
「あのちょっと!・・・」
村田が何か俺に叫んでいたみたいだけど・・・まぁどうせ悪口だろう。
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