第13話「国会議員皆殺し計画」

 亜衣は白の館に戻っていた。父親であるドクターホワイトこと白河博士を説得し、政府転覆をやめさせるためだ。廃病院を転用した白の館。白河博士はここでアウェイガーに関する研究を続けてきたのだ。


「父さんの計画は荒唐無稽です。国会議員を皆殺しだなんて……そんなバカげたことを」

「アウェイガーの強さは、ずっとワシの助手をしてきたお前なら知っているだろう。アウェイガー数人で、数百人を殺すことができる。欲ボケの国会議員どもを全員殺せば補欠選挙が行われ、新しい政治家たちの政権ができる。実に民主的な革命ではないか」

「何百人も殺して、何が?!」


 あきれたようにつぶやく亜衣に対し、幼子をたしなめるように白河博士は言う。


「いいか。この白の館に来てアウェイガーになった者たちは、無能な政治と冷淡な社会の犠牲者なのだ。就職氷河期世代でブラック企業に勤めざるを得ず心身を病んだ者。社会に適合できず引きこもり親に捨てられた者。貧困の蟻地獄に落ちホームレスになった者。みなこの白の館で新しい人生を得たのだ」


 いくらアウェイガーが圧倒的な強さでも、国会議員数百人を皆殺しにするにはある程度の人数が必要だ。そのため、若起が可能になった者は、やはり社会に捨てられたような人間を“スカウト”し仲間を増やした。バインダーとカードを得てアウェイガーになった者は、自信と生きる気力を取り戻すことができたのだった。


「人殺しが新しい人生ですか!」

「世直しだよ。この国の為政者たちは金と権力でガチガチに保身し、国や国民のことなど考えなくなっている。結果、社会は階層化し、活力は失われ、外国に周回遅れにされてしまった。これでは、今太閤の出てくる余地はない。ワシは若者に希望を与えたいのだよ」



 取り付く島もない。



「治英を、どうするんですか」


 何か話の取っ掛かりが欲しくて、亜衣は話題を変えた。亜衣にとって、治英はそういう存在だ。

 治英はこの廃病院の一室に拘束具を着けられ監禁されている。たとえバインダー無しで若起できたとしても、動けなければ何もできないと判断されたのだ。


「ン……あれは興味深い。遺伝子をじっくり解析せんとな。どうやらネコ科の猛獣の力に目覚めたようだが。バインダーもカードも無しで若起とは、通常はありえん。やはり突然変異か……」


 その時、廃病院が大きく揺れ、入口の方が騒がしくなった。見張りに立ってるアウェイガーらの悲鳴も聞こえる。

 亜衣は白河と話してた院長室を出て、ロビーに向かう。

 ロビーでは何人ものアウェイガーが謎の侵入者と戦っており、その中に勇もいる。だか他の者はほぼ倒されていた。

 相手は西洋人の男二人。トリアと同じような服装をしている。 CIAか。あいつの仲間か。

 亜衣は治英のいる病室へ向かい走る。

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