第11話「ゲノムカード」
慧の首は血を流しながら崖の下へ落ちていき、体は破裂した水道管から勢い良く出る水のように血しぶきを飛ばし、その場に倒れた。
「黄色い猿がCIAに入れるわけ無いだろ。底なしのバカだな」
亜衣は目の前の光景が信じられないといったふうに立ちつくす。治英もまた何がなんだかわからない。
「いくらアウェイガーとやらが驚異的な自己治癒力を持っていても、首と胴を切り離されてはどうしようもあるまい」
満足気にニヤリと笑うトリア。
治英は冷静を心がけつつも、怒りを抑えられない声を出す。
「なんで……なんで殺した!」
「もちろん、ドクターホワイトの政府転覆計画を阻止するためさ。アウェイガーを一人残らず殺してな!」
チラっと治英の左手首に着いてるバインダーブレスを確認したトリアは、治英に襲いかかる。
「若起!」治英の体を強装が包む。首を狙うトリアの剣をすんでのところで強装により防ぐ治英。トリアはあらためて治英と距離をとった。
「なんだよ。苦しまずに殺してやろうというのに。つくづく日本人は非効率的だ」
「何が……!」
「だったら全身で痛みを感じて死ね!」
左手首を90度曲げたトリアの腕から銃口が伸び、マシンガンのように治英を撃つ。その素早さに治英は避けることも防ぐこともできず、全身に弾を浴び、強装のヒビから血を流し倒れた。
その周りには1円玉が多数落ちていた。
「こっ、これは……」
何が起こったか、治英はよくわからなかった。
「フッ、どうだい、ジャパニーズYENコインの味は。日本で銃や弾を持ち歩くのはいろいろとめんどくさくてね。銃を腕に仕込み、コインを弾に使えば堂々と歩ける。日本がキャッシュレス後進国で良かったよ!さて、二度と立ち上がれぬよう、頭を粉々に砕いてやる」
治英の頭をトリアの銃口が狙い定めたとき、我を取り戻し若起した亜衣の羽根がトリアに襲いかかる。
「フライングフィン!」
無数の羽根による攻撃をトリアは巧みにかわしたり右腕の剣で跳ね返したりした。
「フッ、恋人を失ったショックはどうした」
自分の攻撃が通じず、亜衣は驚いた。
「そんなに恋人のところへ行きたいか!」
イラつく声を上げながら、銃は亜衣に向けられた。宙を舞いながらコインの弾をかわし続けていたが、フライングフィンを使ったことで羽根の枚数がかなり減り動きが鈍くなってしまっており、何発かは当たってしまう。亜衣は体勢を崩し地面に墜落した。
ズサッ!
トリアが亜衣にとどめを刺そうとすると、治英がフラフラと立ち上がった。
「やめろ!俺にとどめを刺すんじゃなかったのか」
「さすがアウェイガー。話に聞いたとおり回復がはやい」
亜衣は突然バインダーからカードを抜き若起を解くと、治英に自分のカードを投げ渡した。
トリアに撃たれ、墜落で全身を打ち、立ち上がれない亜衣が暴意で語りかける。
「(私のカードを治英のカードと一緒にバインダーに挟んで!あなたならできるわ)」
「(どういうこと?)」
「(いいから!)」
治英は亜衣から受け取ったカードを自分のバインダーに挟んだ。
その時トリアは左腕の銃を撃った。だがさっきと違い、治英には弾になってる一円玉がクッキリと見えていた。鳥の視覚の良さが発揮されたのだ。治英は弾をかわすことができた。
「何ぃ?!」
次の瞬間、治英の強装に翼が生えた。トリアは治英に銃を乱射する。治英は翼を使い宙を舞い、弾をかわす。
治英は自分でも驚いた。これが、亜衣の力なのか?!
「ドクターホワイトの研究がここまで完成していたとは!」
治英は地面に着地し、その下半身の瞬発力を使い、パンチでトリアの心臓をぶち抜いた。トリアは胸はもちろん背中からもドバドバ流血しぶっ倒れた。アウェイガーと違い、ただの人間であるトリアは二度と立ち上がることはなかった。
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