第6話「カメレオンとカエル」

 その時、治英の体が光りだした。

 治英をつつんだ光は強装になり全身を覆う。さらに治英は叫び声を上げながら全力で鞭をちぎった。


「そうか。お前がバインダー無しで若起する男かい。勇を倒したんだってね。面白いじゃないか」


 そう言うと絵須の姿が消えた。

 治英が戸惑ってると、後ろから鞭が飛んできて治英の首に巻きついた。


「後ろだと?!」


 気づいた時には鞭が治英の首を絞めはじめた。


「ハハハハハ!勇はなんでこんなマヌケに倒されたんだい。さあ、このまま窒息死するか、ショックウェーブの衝撃で死ぬか選びなよ」


 その鞭に何本かの羽根が飛んできて、鞭は首から離れた。

 亜衣が翼から放った羽根だ。


「チッ」


 再び絵須の姿が消えた。


「これは……」


 戸惑う治英に亜衣がつぶやく。


「絵須にはカメレオンの能力があるの。けど暴意をしっかり追えば必ず見つけられるから」

 鞭を出して攻撃する時、絵須は姿を現わす。その時めがけて治英はパンチをくりだした。治英も鞭のダメージを受けたが、絵須にもダメージを与えた。


 治英は自ら鞭を腕に絡め、絵須の動きを押さえようとする。


「鬼ヶ岬へ行かなきゃいけないんだろ。今のうちに!」


 そう言われた亜衣は一瞬戸惑い、その後治英らに背を向けて逃げようとしたが、何者かがその亜衣の背中に飛び蹴りをくらわす。亜衣は吹っ飛び倒れた。


「遅くなりやした、姐さん」


 カエルのようなジャンプ力を持つ眉井だった。


「ここがわかっただけでも褒めてやるさ」

「姐さんの暴意をビンビンに感じたんでさぁ」

「その、姐さんって呼び方は呼び方はおやめ!父娘ほども歳が違うんだよ」

「若起してる間だけは年下のつもりなんで、へへっ」


 絵須は鞭を使って治英を眉井の方へ突き飛ばす。

 ズサッ!倒れる治英。


「この男はお前に任す!」

「おっ、バインダー無しで若起した奴か」


 そう言うと、眉井の姿が治英の視界から消えた。


「なっ……!」


 亜衣が叫ぶ。「治英、上だ!」


「遅いわっ!」


 治英が眉井に気づいた時点で、眉井はものすごい速度で空から治英に襲いかかり、頭部に肘打ちと膝蹴りをくらわせた。


「人の心配をしてる場合か!」


 そう叫んで絵須は亜衣に襲いかかる。亜衣は翼で宙へ逃げても脚を鞭でからめとられ、地上にいれば滅多打ちにされる。羽根を飛ばしても鞭で防がれる。


 治英は頭部から血をボタボタ流しながら眉井の動きを追うが、地面を這いながらピョンピョンとトリッキーに移動してたかと思うと、すばやく跳び上がり頭上からの攻撃。治英は翻弄される。


 眉井が得意げに言う。


「俺はカエルの能力を持ったアウェイガーだ。お前が何の遺伝子に目覚めたか知らんが、俺を捕まえられるか?」


「眉井、殺すんじゃないよ」


 絵須が念を押すように言う。


「わかってまさぁ」


 亜衣は絵須の鞭による攻撃に対し、攻めることも守ることもできずダメージばかりが増えていた。

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