第2話

美少女後輩に引っ張られ、なすがまま歩き続けていると公園に着いた。公園には小学校の授業が終わり、遊んでいるのであろう小学生、そして砂場で遊んでいる未就学児たちがいた。その未就学児の側にて談笑している、おそらくこの付近に住んでいるであろう奥さま方がいた。


「ここどうぞ」

彼女は公園の入口にあったベンチを指さし、座るように促した。引っ張られる前に発せられた一言以降、無言でここまで連れ出した彼女の声であった。俺が座ると彼女もその隣に座り声が発せられた。


「突然ここまで連れて来てしまってすみません。誘いを断ったのにしつこく絡んできたので」


「気にしないでいいよ。高校生活初日からナンパだなんて大変だね」


女性との会話において重要なのはファーストインプレッション、ここで何だこいつ…などと思われたならばこれから先話すことなどないであろう。まぁこれ以降話すことはないと思うが。美紅?あれは幼馴染みだからノーカンだ。


「はい。私見ての通り可愛いじゃないですか?そのせいでクラスの男子にも結構誘われましたし、面倒です」


「あ、そうだね」


…この子自分で自分のこと可愛いという系の女子か。だがしかし「君かわいいね」とか言われ、実際可愛い(客観的にみて)にも関わらず「えー!かわいくないですよ!」と否定する面倒臭い女子よりはいいのかもしれないが。

なんなら「私かわいくない」と書いておきながら自撮りをSNSに載せて「かわいくない」と来たらブロックするのは何なんだと思うのでストレートに可愛いと認めるのは正解なのかもしれない。



「センパイ、今こいつ自分のこと可愛いって言った?自意識過剰かよ…とか思いました?」

「自意識過剰かよとは思ってないぞ」


こいつ…俺の脳内を読んだのかよ。サイキック系の美少女なの?それどこのシンデレラガールズですか。

「何なんでしょうね。可愛くないと否定すれば周りの女子は面倒臭い顔しますし、可愛いと認めても周りの女子は叩いてきますし」


美人には美人の悩みがあるというがそれを目の当たりにした瞬間である。たしかになぁ…女子グループで、嫌味だと捉えられてそれがきっかけでハブられることもあると思えば美人も大変なんだな。美人に生まれた場合は人生イージーモードだろうとかこの瞬間まで思っててごめんなさい。女って面倒臭いんだな。あぁ男に生まれてよかった!書類ばらまいても女は寄ってこないけどね。多分使えない男だと思われるんだろうな。むしろ離れていくな。


「人間てそんなもんじゃないの?高慢、物欲、ねたみ、色欲等々七つの大罪があるんだから自分より可愛いと認めたくなかったり、自分の好きな人をとられそうと思ったりすればそういう感情を抱くんだろうな。多分」


言ってて恥ずかしくなってしまった。最後に多分をつけることによって、言葉に責任を持ちませんよということをアピールしていく。しかもどのツラ下げて言ってんだとか思われてそうだな…。


「…意外と考えてるんですね。あんまりモテなそう顔してるのに」

「お前さんナチュラル畜生なの?」


こいつちょっと可愛いからって何でも言っていいと思ってんの?少し言い返してやろうかと思い横を向く。


「ふふっ…センパイって案外いい人なんですね。これからも私の愚痴きいてくださいよ。あ、今日は突然こんなとこまでついて来てもらってすみません。センパイまた学校で!」


黄昏の光がたゆたう中、彼女の顔はその光に照らされていて…。

はにかみながらそう告げて駆けてゆく彼女の顔はこれまで見てきた芸能人の誰よりも綺麗で思わず頬に紅を点してしまった。


可愛ければ何でも言っていいと思った瞬間であった。






あぁそういえば名前聞いてなかったな…。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る