プレゼント
時系列はまた少し遡り、クリスマスの四首脳会談直後の事・・・・・・
「なんだろこれ・・・・・・」
チャーチルやチャドヴィンスキーと共に今回は迎賓館に宿泊する沙羅だが、部屋に戻ってくると何やら紙袋とメッセージカードのような物が置いてあった。
「ねぇマイク。心当たりある?」
マイク補佐官に問うが、彼も首を横に振る。
「大統領、これ日本語ですよ」
そう言うとマイクは、手に取ったメッセージカードをピッと投げる。
「わっ、あんた大統領に向かってメッセージカード投げてんじゃないわよ。えーと・・・メリークリスマス、大統領が今一番欲しいものを御用意しました・・・・・・?あら、名前がないわね」
「日本のスタッフで大統領のファンの方ではないですか?」
「そうかしらね・・・・・・でも、私、欲しいものなんて言った?」
「直接言わずとも、盗聴されている可能性もありますし」
「それなら忍者が分かるじゃない」
忍者は敵国のみならず、ここ東京を初め、ロンドン、サンクトペテルブルク等にも潜入し、任務を行っていた。
「そうですな・・・・・・やはり日本政府内のファンの方でしょう。大統領が日本語や日本文化に堪能なのは日本人にも周知されておりますし、欲しいものなんて分からなくても、そう書いてみただけでしょうな」
「そうかな・・・・・・」
とりあえず袋の中身を確認する沙羅。
「わ、これ凄い高い日本酒・・・・・・それに、封筒?」
封筒を開けると、熊本迄の汽車の切符が入っていた。
「それも二人分・・・・・・しかも一等車(国鉄における客車等級区分。一等は現代のグリーン車より格上)?!え、まじで誰よ?」
「やはり日本政府の計らいではないですか?」
「うん、まあそうとしか思えないわねこうなってくると。吉田総理は何も言ってなかったけど・・・・・・」
「サプライズだったのでしょう」
「でも二人分?あんた達が来るなら足りないし、かといって二人きりで行くような相手も・・・・・・」
「件の日本陸軍の憲兵では?」
「え、そういう事?でも全くの二人きりなんて今までないわよ?」
「脱走した時あったでしょう」
「あっ」
「まあ彼には我が合衆国としても信頼を置いていますから、安心して大統領を任せられます」
「じゃあ、ここは日本政府に甘えて・・・・・・」
「影武者もそうそう出番があっても困りますから、ニューイヤーになったらすぐ帰って来るんですよ」
「もう、分かってるわよ、合衆国トップの私を子供みたいに言うな」
かくして、ニューイヤーズイブに行動を共にする事となった沙羅と博文。
沙羅はこれが日本政府の計らいと思っていたが、実は博文が直接陸軍省に談判し、陸軍、海軍、そして政府や鉄道省と話が回り、最終的に吉田総理がこっそり沙羅の部屋に紙袋とカードを置いて、実現する事となったのである。
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