クリスマス東京会談3




 吉田に忍者部隊の事を聞かれ、自身の事を話すべきか迷う沙羅。



「まあ、日本の忍者というのは隠密行動に特化し・・・敵の懐に入り込んで撹乱するというのは正に忍者の忍者たるであります故・・・・・・それに私はかねてより日本の歴史に興味を持ち、それで我が国にも忍者の様な隠密行動に特化した兵を育てたいと・・・・・・」



 しどろもどろになりながら日本語で説明する沙羅。

 筆者が食後にネタを呟きつつ、加熱式タバコを吸いながらこの話を書いていたら、盛大に噎せたのは秘密にしておこう。



「エリザベス大統領、なんか急にしどろもどろになりましたがどうかしましたか?」



 もしかしたら体調を崩したかも知れないと、吉田は心配そうに沙羅を見遣る。



「い、いえ・・・・・・」(前世の事は個別の会談の時に・・・・・・)



「では何かありましたら、遠慮なさらずスタッフにお伝えくださいね」



「お気遣いありがとうございます。それで話を戻しますが、ベルリンに潜入する我が国の忍者達からのある有力な情報が・・・・・・」



「ほう?」



 なぜ敵のど真ん中に潜入出来たのかという様なことは、三首脳ともこの際気にせず、沙羅の言うその忍者からの情報に耳を傾ける。



「忍者の情報によれば、昨今の相次ぐ敗退で国防軍内部で責任の擦り付け合いが発生。最初は海軍と空軍の対立、そして責任の所在の押し付け合い・・・・・・どんどんそれはヒートアップして、遂には国防軍内部の旧プロイセン貴族の将校らを中心として、ヒトラーの暗殺計画が持ち上がっていると言うのです」



 とはいえ、捕虜の尋問等から、ドイツ内部でのヒトラー暗殺計画の存在は英露日とも情報は掴んでいた。だが問題はそれからだ。



「それで、彼らから我が忍者に接触がありまして・・・・・・」



 どこから忍者の情報が漏れたのかは分からないが、ヒトラー暗殺計画の主要メンバー達から忍者部隊にコンタクトがあり、連合軍に暗殺計画の協力を申し出てきたというわけである。



「ですが、先程も話した通り、ヒトラーを一人殺したところでナチ政権崩壊まで繋がる可能性は低いものと思われます」



「では彼等への協力は断ると?」



 チャドヴィンスキーが問う。

 沙羅はチッチッチッと首を横に振り、これだから男は・・・・・・といった目で三首脳を呆れた目で見る。



「あなた方は一国の首相でありながら、そんな短絡的な考えしかお持ちしていらっしゃらないのですか?」



「ではどうやってナチどもからヨーロッパを解放すると言うのだ!」



 葉巻をぷかぷか吹かしつつ、チャーチルが話を急かす。



「まあまあ落ち着いてください。ヒトラーに限らずゲッベルス、ゲーリング、ヒムラーを暗殺するとか、そういう単純な事ばかりを考えていては駄目なんですよ。つまりですね・・・・・・」




 沙羅は前世の知識、現在これまでの戦局の推移等からナチス・ドイツ打倒の為に何が必要かを論理的に三首脳に説明していく。



「ヒトラー暗殺計画への協力はひとまず致します。それと並行で我が方のドイツ兵捕虜を中心として、忍者がドイツ国民からも志願者を募り、自由ドイツ軍を組織、比較的安全なここ日本と我が合衆国で訓練致します。で、その自由ドイツの代表は・・・・・・」



「なんと・・・・・・」



「フランスの様にもうひとつのドイツを作ると言うわけか・・・・・・」



「ドイツ国民の手による祖国の解放・・・・・・面白い」



 三首脳とも、沙羅の自由ドイツ軍計画に乗り気のようである。

 かくして、この日の四首脳会談はこの世界の歴史に重要な1ページを残す事となった。







































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