参戦



 沙羅の知る歴史の通り、第二次欧州大戦は始まってしまった。更にそれに至るまでの英仏露の軍事的対応の拙さにより、独軍は瞬く間にポーランドを攻略してしまう。そして勢いに乗った独軍は、更にイタリアやルーマニア等の同盟軍と合流し、そのままロシア帝国領内に侵攻、事ここに至ってロシア帝国は日米両国に対して対独参戦、陸軍派遣を求めたが、日本政府は難民救出には中立の立場を維持した方が得策と考え、物資輸送等の支援は行うがロシア帝国の派兵要求を拒否し、エリザベス=沙羅率いるアメリカ合衆国連邦政府も日本に同調し、多少の支援は約束したが、すぐに直接の参戦は行わなかった。そして、合衆国では大統領選挙が行われ、沙羅は再選を果たし、二期目の任期を迎えるのであった。しかし、そんな状況もすぐに変わる事となる。

 


 1941年2月 アメリカ合衆国 ホワイトハウス



 前年、この世界でも独軍はフランス、オランダ、ベルギーへ一気に侵攻。ベルギー、オランダは敢闘むなしく瞬く間に降伏。フランスも沙羅の知る歴史同様にパリまで迫られ、降伏。しかし、ドイツ軍も東部戦線の露軍への対応もあって、フランス攻勢では前世以上にかなりの苦戦を強いられ、すぐ様ブリテン島に攻勢をかける余裕はとてもなかったのである。

 そして、戦線は再び膠着・・・・・・




「ロイヤルネイビーと日本海軍、合衆国海軍の共闘か・・・・・・」



 前年、大西洋で独Uボートによる日本船籍や米国船籍の商船撃沈が連続したのを契機とし、遂に日米両国の世論が参戦に傾き、両国政府は対独宣戦布告を決め、大西洋に派遣されてきた日本の軍艦達の記事を見て沙羅は目を輝かせる。



「大西洋に長門とメリーランドが揃いますから、ブリテン島防衛は容易になります」



 この世界では軍縮条約もスムーズに進み、建造計画も前世とは異なっていたが、日本は建造中だった陸奥を未完成と認め、廃艦。その後の第二次軍縮条約でも踏襲され、日米英の思惑や勢力均衡を調整した結果、16インチ砲搭載の巨大戦艦は現時点で長門とメリーランドの二隻のみとなっていた。その変わり、前世の海軍軍縮条約では規制のあった空母に関する制限はあまり無い。空母も載せる飛行機も進化はしているが、英、米、日の世界三大海軍でも空母を海戦での主戦力とする向きはまだ少なかったのである。



「そうね。それにしても、長門を引っ張り出すなんてビヤ樽男も中々やるわね」



「チャーチル首相は海軍出身ですからな。それに日本帝国海軍は英国海軍の子のようなものですから」



「確かに。まあチャイナでのいざこざも片付いたし、日本としては本国周辺の脅威はないから、主力戦艦を派遣できたのね」



「ドイツ海軍が太平洋に現れるなんて事はまずないでしょうしな」



「でも慢心はしちゃダメよ」



「サー」



 慢心とは行かずとも、沙羅も正直日英米三大海軍の守る太平洋に再建途上のドイツ海軍がのこのこやって来れるはずはないと内心思っていた。



(でも前世だと、ドイツ海軍、イタリア海軍のUボートはインド洋上とかシンガポールまで来てたりする・・・・・・つまり、不可能じゃない。けど、この世界の日本は連合国。普通にそんな事はありえないわよね)




「大統領、それでUボート対策ですが・・・・・・」



 沙羅は補佐官の話を上の空で聞きながら、これからのこの世界に想いを馳せ、戦略を練るのであった。











































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