問題




 さて、ここで時系列は少し遡り、沙羅が転生して間もない頃。彼女はある問題を抱えていた。



「あータピオカ飲みたいメロンパンアイス食べたいそしてそれインスタで共有したいせめて喫茶店のウェハース乗ったアイスとかパフェくらい食べたい!東京行きたいていうか日本に住みたい!」



 彼女は元々兵士とはいえ、中身は普通の平成生まれの女子なのである。

 そんな現代っ子がこの携帯電話すらない時代に来てストレスが溜まるのは道理であった。



「大統領、わがまま言わないでくださいよ。いくら友好国でも現職大統領が日本に住むなんて無理ですよアホか!アイスクリームだったらこちらで御用意しますから」



 補佐官や側近達は沙羅の心情を慮りつつも、子供のように駄々をこねるアメリカ連邦政府のトップの姿にドン引きである。



「違うの!そういう事じゃないの!ウェハース乗ったやつを喫茶店で食べるのがいいの!」



「はぁ・・・・・・それでタピオカとかメロンパンアイス?ってなんなんですか?」



「あ、この時代にはまだないのよね・・・・・・メロンパンも日本発祥だっけ・・・・・・とにかくさぁ、何か日本の物が食べたくてよ」



「食べたくてよと言われましても、就任当初より食事に関しては日本食ばかりじゃないですか!」



「でもいつものはアメリカ人のシェフが作ったアメリカにおけるアメリカ人の考える日本食じゃない!日本人が毎日寿司とか天ぷらとかすき焼きやら食ってると思とんかと!私はね、日本人の料理人が作った本物を食べたいの!」



「あのですね、外国人、とりわけその・・・友好国とは言え有色人種のスタッフを大統領府で雇うのはあまり・・・・・・」



「なんねそれ(前世でもこっちでもこの時代の白人至上主義根強すぎるわ)・・・・・・じゃあさ、今度ロスのリトルトーキョー行こうよ」



「行こうよってそんな簡単に言わないでくださいよ。大統領は現在まだ就任して二ヶ月も経ってないんですから、支持率も安定しない大事な時期にそんな私情で動かれては市民やマスコミは黙ってませんよ」



「むぅ・・・・・・」



 膨れっ面でスケジュールを睨む沙羅にこの場にいる全員、呆れて物も言えない。

 だが、そんな彼女の不満は東京での日露外相との会談の際、遂に爆発するのであった。




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