さて、この世界に沙羅が転生した時点でのアジア太平洋地域をざっくり説明すると、台湾、南朝鮮(現在の大韓民国より少し小さい範囲)が日本領、北朝鮮、樺太はロシア領だが樺太島の利権は日本も持ち、前世の委任統治領や米領、豪領の島々、英印、蘭印、仏印はそのまま、支那大陸には日英仏露の租借地、そして日英が作った満州国・・・・・・結局、中国は清の時代から列強により切り取られたまんまであった。

 米国は日英を中心に行われたこれらの策謀を当初は批判していたが、日英が満州国を建国し、その鉄道などの利権、甘い汁を米国にも解放した事、そして沙羅がこの世界に転生した事で次第に米国も欧日列強と近づいていく。

 と、そんな環太平洋の情勢を説明した所で、本編に入ろう。




 1937年 昭和十二年 4月 東京



 日露外相との定例の会談の為、沙羅はここ東京を訪れた。

 転生前、沙羅としては何度も来たが、この世界で米国大統領となってからは初めての東京だ。

 ちなみにこの世界では米国首脳の来日はもはや珍しくないらしい。



「エリザベス大統領、シュチャーチン外相。ようこそ東京へ」



 会談の冒頭、主催国の大日本帝国外相松岡洋右が挨拶する。



「これはこれは松岡外相、ご丁寧にありがとうございます。シュチャーチン外相もはじめましてですな」



「米国初の女性大統領として、我々も期待しております。これからの世界は男女同権の時代でありますからな」



 シュチャーチンは口ではそう言いつつも、彼や松岡の態度から、その言葉の裏には皮肉めいたものがある事を沙羅は感じ取っていた。

 そこで彼女は、この男共をまずどう転がしてやろうかと変な方向に熱が入るのであった。





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