予想通りの結末
その日の夜。
「やっぱり噛み付きやがったwwwww」
酔いが回って顔を赤くした悪友は、興奮気味に騒いで講演会での二人の暴走を冷やかして来る。
「いやぁ~、でもまさかお前らがあそこまで言うとはな!
「うるさい……」
大声で笑い転げる康介を見て、頭の冷えた静夜は今更やらかしたことを自覚し、きまりが悪そうにペットボトルのジンジャーエールを煽った。
栞も、グラスに注いだ梅酒に影を落として元気のない声を出す。
「……ごめんな、静夜君。……ウチがあそこで手を挙げへんかったら、こんなことには……」
「し、栞さんのせいじゃないよ……。僕の我慢が足りなかっただけだし、栞さんの発言がなかったとしても、結局はあぁなっていたかもしれないし……」
「だから講演会には来たくなかったんだろ? 絶対に何か一言言ってやりたくなるから! だから俺が来るか? って聞いた時、嫌そうな顔で渋ったんだろ?」
「そんなんじゃないよ。あの時は本当に興味がなかっただけ」
「嘘つけ! 栞ちゃんが誘わなかったとしても、どうせシスコンのお前は一人であの講演会に乗り込んで、今日みたいになんか言ってたに違いない!」
「だから違うってば!」
静夜をシスコンとからかって来る康介に、意地になって否定し続けると、それを見ていた栞も笑いを堪えきれなくなって噴き出した。
「ふふふ。……せやけど、おおきに、静夜君。おかげでウチもちょっとスッキリしたわ」
「……まあ、僕も言いたいこと言えてスカッとしたから、後悔はしてないよ」
互いに顔を見合わせて晴れやかに笑う。栞は氷で冷えた梅酒を一気に飲み干すと満足そうに息を着いた。
「だけどさ、静夜の言ってた、スノーフォックスが〈フォックスマジック〉を使って、武器や兵器を作ろうとしてるって話はマジなのか?」
康介がつまみに用意したチーズを口にしながら問いかけて来る。
静夜は広いリビングのテーブルに広げられたポテトチップスに手を伸ばした。
「さあ? 証拠は何もないし、調べてもいないから、実際のところはどうか分からないけど、彼らが〈フォックスマジック〉の研究で陰陽師協会と手を組んでいるとしたら、それは十分にあり得る話だと思うよ……?」
うす塩味の堅あげポテトを噛み潰しながら、静夜はあの時言い放った憶測について改めて考える。
〈フォックスマジック〉の技術を応用した、武器や兵器の開発。
それは静夜と妖花の義理の父、
「……悪い冗談のように聞こえるかもしれないけれど、〈悠久の宝玉〉の力を使えば、核兵器なんて目じゃないくらいの大量破壊兵器が作れてしまう。ひょっとしたら、拳銃一つで世界を滅ぼせるかもしれない……」
「……」「……」
あまりにも現実感のない話だが、それを
栞も康介も、〈フォックスマジック〉の成り立ちについては、静夜や妖花、そして実際に〈フォックスマジック〉の完成に立ち会った町工場の従業員、吉田から話を聞いて知っている。
さらに、雪ノ森
「……こ、康君やったら、スノーフォックスの内部事情にも詳しいやろ? 新しい事業の話とか、取引先の話とかって聞いたりせぇへんの?」
栞が情報を求めて水を向けるも、康介は肩を
「いや? いくら
雪ノ森の一家と個人的に交流のある康介は、〈フォックスマジック〉の真相を知った時こそ彼らを擁護しようとしていたが、今ではたまに静夜や妖花にスノーフォックスの情報を流してくれるほどの頼もしい味方になってくれていた。
それでも、雪ノ森の一族が必死に守ろうとしている〈フォックスマジック〉の秘密に迫ることは彼にも難しいようだ。
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