第27話 馴染んだ日常の裏に


「キンマ様、春吉はるきち様。食事の用意ができましたよ」


「今はテーブルに置いておけ! 大事な場面じゃ!」


 自身の側近に見向きもせず、キンマは目を血ばしらせて、植物の奇怪な生物を撃退していた。


 現在俺とキンマは、ホラーガンシューティングゲームに励んでいた。


 『バイオプラント』――国内でも屈指の人気を誇るゲームであり、それ以降何作とジャンルや機種を変えながら、リリースされてきた実績を持つ。

 ただ一つ。

 これ、元有った世界のものと毛色が違うのよね。

 前までは多種多様なクリーチャーを前に戦うというコンセプトだったんだけど、この世界になってからというもの、あらゆるゲームに規制というメスが介入していた。

 なんでもこの世界に住む他種族が、オーク侵害だのゾンビ侵害だのと苦情が集まり、それによって変更を余儀なくされたらしい。

 まあ、わざわざ実在する生物をゲームに出す意義が薄くなったのは分かる。

 今じゃ珍しくないものね、ファンタジーな生物。


「やったぞ春吉! ゲームクリアじゃ‼」


 そうふけっていたところで、戦闘は終了した。

 エンドロールが流れ、鼻を高々に勝ち誇るキンマ。


「購入して三日か。結構な道のりだったな」


「それもこれも、わらわのプレイスキルがあってというものよ。ほれ、褒美にわらわを労うのじゃ」


 そう言うや彼女は俺の膝の上に乗っかり、食卓を指さした。


「食事ぐらい自分で取れよ」


「わらわは疲れておる。かみぶさん(食べたいから)、さっさとしろ」


「キンマ様~‼ そんな奴の手を借りることないですよ! 命ならこのわたくしめに‼」


「うるさいシシリー。春吉に頼むと言っておる」


「ふふ、さあご飯にしましょうか皆さん」


 マミヤさんは微笑ましそうに。

 シシリーは、心底恨めしそうな顔で食事の席に着く。


 思えばこの食卓も、随分と賑やかなったものである。


 他人との交流に、深くまで立ち入ろうとしなかった前までの俺が見れば、さぞ奇怪がるだろう。

 その光景を前に、ほんの少し寂しい気持ちが込み上げた。


 キンマの話によれば、残るマジムンはあと一体。


 そいつが居なくなれば、皆とも別れになるのだから。


「ほれ、何をしておる。さっさと肉を寄越せ」


「へいへい」


 まあ、今は悲観になることもあるまい。

 俺は気持ちを立て直し、膝の上でふんぞり返る神様にてびちの肉切れを献上する。

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