【51本目】スピード(1994年・米)
吹き替え版で山ちゃんがやってるジャックびっくりするぐらいイケメンだな……
【感想】
今キアヌ・リーヴスの代表作と言われると、多くの人は犬殺し絶対許さないマンこと【ジョン・ウィック】シリーズを思い浮かべることでしょう。
でも僕らの世代にとっては、なんと言っても彼は【マトリックス】の救世主ことネオなんですよね。
まあ【マトリックス】に関しては語ることが多すぎるので後日に機会を回すとして、あの映画が公開されるまで、キアヌ・リーヴスの代表作だったのがこの映画です。
速度を落としたら爆破する車、というシンプルながら緊張感のある設定によって世界中で【ダイ・ハード】以来の大ヒットを記録し、1994年のアカデミー賞でも3部門ノミネート、録音賞と音響編集賞の2部門を受賞した映画です。
いつどんな時間に歩いても車が走っていて、大渋滞なんか日常茶飯事な大都会・ロサンゼルスで、絶対に止まれない大型車両なんてものが街中を走ったらどんな大惨事になるか、っていうのを映像としてわっかりやすく示してくれた作品です。本来アクション映画としては低予算な映画なんですが、シンプル故にブレのない脚本と、視覚的に飽きさせない絵造りで2時間弱緊張感をピーンとさせてくる良作になっています。
今見たら興味深いのは、バスの中が一つの閉鎖空間になっているというところですね。人質同士で喧嘩するし人質の中でも凶行に及ぶ人がいたりして、人質だけだと全くまとまりがない状況ですが、ジャックがリーダーとしてその場を取り仕切ることでなんとか安定する、という展開は、デスゲームものとか漂流ものとかでよくみるシチュエーションです。
そういう視点でバス内を見てると、乗客が老若男女様々で人種もバラバラなあのバスの乗客たちって、アメリカ社会の暗喩と言えるのかもしれません(ペインが元南部暮らしの年老いた白人っていうのもまた……)。
後は今の時代にこの映画がリメイクとかされたら全く違う展開になってたかもなっていうのも思いますね。要所要所でペインが自室に何個も置いてあるテレビで中継を見ている、というシーンがありますけど、今だったら絶対複数のパソコンやスマホが置いてあることでしょう。でそれらのデバイスに映ってる複数のSNSサイトw
あと運転手をバスから降ろす下りで観光客男がカメラ撮ってるシーンあったけど、あれも今だったらSNSに上げてそこから一波乱起こるんだろうなって思いますね。
【キャラについて】
軸になってるのはジャックとペインの対立関係ですけど、よく見てみるとこの二人、すごい対照的なんですよね。
ジャックはエレベーターや市バスで起こる爆破テロ事件に冷静な判断で対処してて、一見なろう主人公を彷彿とさせる完璧ぶりです。でもよく見たらしょっちゅうハリーや署長と情報交換を交わしてて、常に報連相の徹底した関係を保ってるんですよね。
展開の中で仲間の死にショックを受けたりもしますが、彼が(時に指示に背いてでも)冷静な対処ができるのは、仲間のフォローを信頼していてこそなんです。
対して悪役のペイン(演じるのは実写版クッパをやって間もない頃のデニスホッパー)は、社会の片隅でひっそり生きる孤独な人間だけど、たった一人で爆弾づくりだのバレずに爆弾設置だのの手間のかかる作業を一人でこなす超人でもあります。仲間との信頼関係があって初めて正確な判断を下せるジャックとは、いろんな意味で対照的です。
対照的な二人のライバル関係こそがこの映画の軸の一つとなるわけですが、ひっそりと生きるペインがなぜ大目立ちするバス爆弾なんてものをしたのか?なんでそれにジャックが巻き込まれるのか?っていうイベント上の問題を、エレベーターでの爆弾事件をめぐる前座パートを使って【刑事への仕返し】という文脈で解決するというシナリオが、この映画で特に光る点の一つです。
前座パートではSWAT同士のジャックとハリー(ハリーを演じるのはMr.ダマーのジム・キャリーじゃない方ことジェフ・ダニエルズ)のバディムービーの形式をとっているのに対して、メインとなるパートではジャックがしがない一般人のアニーとコンビを組むことになる、というのも、意外性のあるコンビって感じでいいですね。
上記のようにジャックは仲間のフォローをとても頼りにしてる人物ですが、ラストでその日初めて会ったはずのジャックとアニーが熱いキスを交わしたのは、アニーがジャックに救われたように、ジャックもアニーに(困難を共に解決する相棒として)救われていたから、っていうのが大きいのかもな、って思いましたね。
(なんで続編であんなことに……)
【好きなシーン】
ハリーの死を知って乗客が引くくらいキレ散らかし、あまつさえ「もうダメだ……」(吹き替えでは「みんなで死ぬか……?」とさらに錯乱気味)と弱音まで吐いてしまうジャックは、悲しい場面ではありますけど、個人的にはすごい感動するくだりですね。
いついかなる時も冷静な行動を取れたのは、支えてくれる友人がいるからだった、っていうのがうまいこと表現されてて、彼も完璧なヒーローじゃなくて、弱さのある一人の人間だったんだな、ってことがわかる場面なんですよあそこ。
あとジャックとペインの、「そのバスはどこで走ってる?」「教えると思うか?」「ああ」「読まれてたか」という、直接会ったのは一度きりなのにお互いの思想を完全に理解してる会話もツボです。
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