【45本目】【祝・アカデミー賞3冠】1917 命をかけた伝令(2019年・米)【ネタバレ注意】
あのクオリティなら鑑賞即緊急レビューでしょ!!
【感想】
2019年のゴールデングローブ賞・ドラマ作品部門を【ジョーカー】や【アイリッシュマン】などの強豪を押しのけて受賞、同年のアカデミー賞で10部門ノミネート、うち撮影賞、録音賞、そして【アベンジャーズ:エンドゲーム】を押しのけて視覚効果賞を受賞、という超好成績を残した映画ということで、公開前から期待値が上がりまくっていた映画です。それこそ【パラサイト】以上に。
(正直作品賞とるんじゃないか?という期待もあった。観てないのにw多分予告編にそういうオーラが見えたんだろう)
監督は【アメリカン・ビューティー】などで大胆なシナリオの使い方(主人公の結末を先にばらすとか)をしたサム・メンデス。彼はこの映画でも、ほぼワンカットの撮影・ほぼ連続した時間軸という思い切った脚本形式を採用しています。
ワンカット映画はヒッチコック監督が【ロープ】なんかで試してたりして(正確にはテープの長さが足りずワンカット風映画になったらしい)るので、それ自体に独自性があるわけではありません(【カメラを止めるな!】のアレとかw)。しかし上記の【ロープ】もそうですけど、ほぼ一か所の場所で物語が展開されるために絵的に若干ダレる、という欠点があります(人によってはそこが味なんだろうけど)。
そのワンカット形式の欠点を綺麗に払しょくしたのが、この【1917】と言えるでしょう。
戦場の伝令、という【移動】を最大の任務とした人物を主人公としているため、同じ戦場を舞台にしてるはずなのに絵面が変わる変わる。
草原→戦闘後の塹壕→敵の塹壕→廃屋→トラック→廃墟→屋内→河→森林→戦闘前の塹壕ときて、また草原に戻る、といった具合に主人公が様々な場所を動き回るから、絵的にダレるなんてことは決してなかったですね。
あと前半部分で戦争の悲惨さを、【過去形の戦争】を描くことで表現していたのも印象深かったです。
戦争映画と言えば、【プライベート・ライアン】の冒頭や【ブラックホーク・ダウン】などのように、近代的な戦闘がいかに血みどろで凄惨なものかを、実際の戦闘をリアルに再現することで見せる、っていうイメージがありますよね。
ただそれらの映画が【恐ろしいことが起こっている】と現在進行形の戦争の風景をえがいているのに対して、【1917】は白骨化したり、ハエやネズミがたかったり、水に浮かんでるからちょっと膨らんでたりする死体を描いて過去形の戦争の風景を描くことで、【恐ろしいことが起こったんだ】と別の形で戦争の恐ろしさを伝えています。結果【プライベート・ライアン】ほどの緊迫感はないものの、戦場の地獄っぷりを効果的に見せつける空間が出来上がってたと思います(静寂に包まれてる分、余計地獄感が増してます)。
そして戦争によってああいう地獄が生まれうる、という事実を主人公が見せつけられるからこそ、後半の戦闘を止めようとする彼の挙動に思いっきり感情移入できるんですよね。
【キャラについて】
敵の塹壕だか、廃屋だかでブレイクが「後方に転任されるかと思って命令を聞きに行ったのに!」とか吐き捨ててるシーンで確信したんですけど、伝令という役割から言ってもブレイクとスコって【スター・ウォーズ・新たなる希望】序盤のC-3POとR2-D2ですよね。もしくは彼らの元ネタである【隠し砦の三悪人】の太平と又七。
大勢の人々の運命を変える争いに巻き込まれたしがない性格の二人組、っていう意味で。
僕自身創作には世界観から作るのが好きなんですが、彼らみたいなタイプの二人組を見ていると、世界観(史実ものなら時代・場所の設定)からキャラクターを作り上げていく、という手法は決して間違いではないな、と確信させられますよ。
兵士の同僚がネズミに耳を噛み切られた話や、チェリーの品種の話など、長回しのの最中にたわいない話をするブレイクの姿は、どことなくタランティーノ映画の香りをかんじたりもしましたが、今思えばああいうたわいもない話を繰り返すことで、彼ら兵士も普通の人間、という事実があの会話から理解できます。
だからこそブレイクがああなってから、スコことスコフィールドが一人ぼっちになってただただ移動している光景は、話し相手がおらず黙って移動しているせいで、ちょっとプログラム通りに動いてるロボットというか、哲学的ゾンビみたいになっていましたね。
それだけに中盤後半で彼がフランス人少女と孤児の赤ちゃんに出会うシーンでは、彼が人間として息を吹き返したかのようでホッとされられました。
【好きなシーン】
中盤で遠方で飛行機が空中戦をしていたと思ったら自分たちのところに突撃してきた、というシーンは、ヒッチコックファンとしてはまんま【北北西に進路をとれ】じゃねぇか!!!ってテンションぶち上がりましたね!
スクリーンで見る最新の映画で好きな過去映画のリスペクトを観られるっていうのは、「あの監督もあの映画好きなんだ!!」的な感動が半端ないです(まあ偶然の可能性もあるけどw)。
ただ、終始シリアスな空気で進むだけにところどころ「ん?w」と思わせるシーンがあったのも無視できないですね。
敵塹壕に雑に用意されてたスーパーマリオ的落とし穴とか、壊れた橋を渡るシーンで普通に泳いだらいいのに(結局その後泳ぐし)カイジの鉄骨渡り風に高欄を伝っていくスコとかw
まあアレだけシリアスな映画だと、そういう細かい穴も独特の味が出てくるんですが。
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