【43本目】アイアンマン(2008年・米)

 このシリーズもいずれ特集と称して感想挙げたいけど、1作1作がハイボリュームなんだよな……


【感想】

 特オタとして、いろんな意味で一時代を築くことになったシリーズのの幕を開いたこの作品を書かないわけにはいかないでしょう。

 

 後に様々な記録を塗り替える一大シリーズとなったMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の記念すべき第1作です。はいそこ、日本での公開は【インクレディブル・ハルク】の方が早いとか言わない。

 上映当時、マーベル映画の興収では第4位を記録(1~3位はサム・ライミ版スパイダーマン3部作)するほどの大ヒットを記録し、2008年のアカデミー賞では視覚効果賞、音響編集賞にノミネートされました。

 自分は劇場公開時は見ていなかったですが、10年ほど前にDVDで見て激ハマりしましたね。後々長い付き合いになるシリーズだと思うと、その時期に見ておいた自分に感謝。

 

 この映画では、「『平和のためには武器が必要』とは言うけど、その武器が自分たちの手元にある保証ってあるの?」という問題がテーマとなります。

 明らかに当時のイラク戦争に対する批判的メッセージが込められたテーマですが、個人的にはそれに限らず、銃社会や核開発など、アメリカ社会の軍事力に対する在り方自体に物申していたように見えなくもないですね。「(アフガンで誘拐されて)自分が無責任なシステムの一部に過ぎなかったと気づいた」というトニーの発言は、軍事力とそれを使う人間の本質を捉えていたように思います。


 あとたまに言われる「ヒーロー気取ってるけど、その状況ってあなたが作り出したんですよね?(多分後半のアフガンで自社の武器を壊して回ったシーンのことを指してるんだろう)」という意見には自分にも思うところがあって。

 トニーの前にコールソンではなくニック・フューリーが姿を現すのは、アフガンでスターク・インダストリーの武器を壊して回ってた時ではなく、アイアンマンとアークリアクターによって強敵たるアイアンモンガーを倒してからなんですよね。武器を破壊するトニーは例えアイアンマンスーツを着込んでいたとしても、単なる心を入れ替えた企業人に過ぎなかったわけです。アークリアクターを搭載したアイアンモンガーという、【アイアンマンでしか解決できない問題】を解決することで、初めて【アイアンマン】はヒーローたりえた(だからこそフューリーもトニーをSHIELDの重要メンバーとしてスカウトした)って風にも言えるんじゃないかな、と、僕は解釈しています。


【キャラについて】安易に新項目作ってみよう

 

 一にも二にもトニー・スタークのお金、地位、技術、すべてを手に入れた、ハリウッド版なろう主人公とでもいうべき【男の憧れ】を体現するようなキャラ造形ですよね。小難しい政治、軍事的な問題からを語らずとも、このキャラを語るだけで長時間費やせる自信があります。

 思うのが、なろう主人公をバカにしてるのと同じ口でトニー・スタークかっけー!とか言ってるネット民も決して少なくなさそうってことですかね。そう考えると、顧客が納得するか否かはパッケージングの問題に過ぎないのかもな、とも。

 そういう意味でも、ドラッグ中毒からまださほど経過していないにもかかわらず、デキる男を完璧に演じてくれたロバート・ダウニーJrには感謝しかないです。


 で、彼のように圧倒的な個性を持つキャラクターがいれば、彼に対しての接し方を描くことで自然と他のキャラクターもキャラが立っていく、というのが何回も見ているとわかります。

 彼の破天荒な振る舞いに呆れながらも終始友人として接するロディー、内なる思いを隠して事務的に接するペッパー、思想に色々思うことはありつつも男としては魅かれてる女記者、科学者として半ば崇拝しているインセン、シンプルに武器開発の道具として考えるテンリングス、そして表向きは父親代わりとして接しつつも実際は金の卵として見ていたオバディア、といった具合に。【対立させることでキャラの特徴が際立つ】というキャラクター創作の基礎が、トニーを中心としたキャラクターの相関関係に現れてるような気がしますよ。

 こういうのを見ていると、やっぱり創作の参考にするなら、アカデミー賞で結果出すような社会派映画より興収で結果出すエンタメ映画だよな!って思わされます。


【好きなシーン】


 冒頭でまず事件を起こす、詳しいキャラ設定はその後、というエンタメ作品の基本中の基本を踏襲した冒頭のシーンはそれだけで唸ります。

 ただ事件を起こすだけじゃなく、ほんとの冒頭の兵士たちと会話しているパートでトニーのキャラクターを手短に説明しているところにも感心します。


 後は【アベンジャーズ:エンドゲーム】まで見ていると、インセンに「家族は?」と言われて、しばし沈黙してから「いない……」と答えるトニーの姿にはひときわ哀愁が漂います。そうだよなー、かつての家族はいないし、後に家族になる人たちもまだ他人だからなー。


 あとこの時点ではハッピーがほぼただのモブなのも面白いです。

 今見たらモブにしては特徴的すぎるなって感じでw

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る