【140本目】民衆の敵(1931年・米)

 キャグニーって30年代に活躍したわけだからほぼ歴史上の人物だけど、そんな人物が【ラグタイム】でサミュエルLジャクソンと共演経験があるってのがすごい


【感想】

 1930年代にヒットしたギャング映画で、【暗黒街の顔役】と並ぶ人気を誇った映画です。

 この映画で小柄さと特徴的な喋り方、そして暴力的な振る舞いのギャングを演じたジェームズ・キャグニーがブレイクするきっかけにもなりました。


(彼がどのくらいの人気者かというと、イーストウッドが【許されざる者】のパンフレットにて自分も(共演した)ジーン・ハックマンやリチャード・ハリスもジェームズ・キャグニーのギャング映画を見て育った世代、と語っているレベル)


 【暗黒街の顔役】がリメイク作品の【スカーフェイス】と同じ一人のギャングの成り上がりと破滅に焦点を当てた映画だとしたら、この【民衆の敵】は【グッドフェローズ】や【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ】のようなギャングの人生を少年時代から追っていく形式の物語になっています。ですが今作の上映当時は1931年でまだ禁酒法撤廃前に上映されている、という背景を考えると、【グッドフェローズ】などにはない生生しさが垣間見えてきます。


 また通してみると、いわゆるファム・ファタール的な女性の出番は少なく、むしろ男性同士の人間関係に焦点を当てたような作りになっています。自分たちを切り捨てた兄貴分との因縁や、まっとうな人生を生きる兄との確執、そして何よりトムとマットの少年時代以来の友情関係なんかがわかりやすいですね。


 1950年代にジャン・ギャバンとかが出てたフランス製ギャング映画ではファム・ファタールとの愛憎劇よりも男同士の友情などにスポットが当てられる場合が多いんですけど、ある意味でそれらの映画は源流をたどっていくとこの【民衆の敵】みたいな映画にたどり着くんじゃないか、とも思いました。



【好きなシーン】

 ジェームズ・キャグニーってスコセッシ映画のジョー・ペシに似すぎじゃないですか?w 小柄だったり声が特徴的だったりそれでいて暴力的だから余計怖かったりで。

 まあ【グッドフェローズ】や【アイリッシュマン】のペシが個性を発揮しつつもわき役としてデ・ニーロの引き立て役に徹してるのに対して、キャグニーは徹頭徹尾主役を張っていますが。


 他、石炭の運ばれる音を銃声と勘違いしたり、土砂降りの雨の中で友人の復讐帰りに「俺も弱いな……」と独りごちたりと、土壇場で主人公が弱気を見せるシーンも見どころですが、第一次大戦帰りの兄貴がトムがギャング商売をしていることにブチギレると、『兄さんだって戦場で沢山殺したくせに!』というニュアンスの発言をしているのが興味深かったですね。

 実際、禁酒法時代には先の大戦で価値観を狂わされたギャングが多くいたんだろうな、と思わされます。

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