第9話 大阪から東京
東京駅で降りた二人。
涼太と羽根が迎えに来ていた。
「翔、おかえり。
あれ、兄さんは?」
「それなんやけど…」
羽根が何かに気付き、涼太のことを突いた。
「翔、そちらの方は?」
涼太も気付き翔にたずねた。
「絆ちゃんや。
オレの彼女。」
やっぱり双子というのは同じことをしてしまうみたいで、大阪駅の新幹線のプラットフォームで新幹線の出発の扉が閉まる瞬間に、オレは絆ちゃんのことを新幹線の中に引っ張ってしまい、
永遠ちゃんは大介さんのことを降ろしちゃったらしいんだ。
だから、東京駅で降りた二人がオレと絆になってしまったという理由。
ことの顛末をきいた涼太と羽根の反応は、想像してみてください。
それにしても、絆がまさかオレと大介さんのこと誤解するなんてね。
誤解ではないのかな…。
オレのことを良く知る絆には、オレの淋しさが伝わってもうたのかな。
自分の誤解に気づきテンパる絆がオレは心配やったのと、オレの告白への答えも気になり、思わず絆の手を引っ張ってしまったけど、良い子はマネしちゃいけないやつやな、あれは。
オレの告白もそっちのけでテンパる絆ちゃんは永遠に電話をかけ謝っていた。
そして、やっとこオレの想いを再確認した絆は安心したようにオレの肩に頭を傾け寝込んでしまい、二人が気付いたときには東京駅だった。
そして大阪駅のふたりは。
「大介さん、すみません。
あのふたりはこのまま東京に向うみたいです。」
永遠が絆との電話を切り、大介に伝えた。
「うちも、大介さんを降ろさずに乗り込んじゃえば、少しは迷惑にならずにすみましたよね。」
「ちがうよ。
俺が降りたいと思って降りちゃったんだから。
永遠さん。あらためて話すけど、俺はもういい歳だし、翔や弟の涼太のように小さい頃から一途に君のことを思ってきた訳でもない。
それに仕事もあるし、今日東京に帰らなくちゃいけない。
でも、また君に逢いに来てもいいかな。」
「大介さん、待っていますね。」
大介が永遠を優しく抱き寄せた。
大介と永遠。
発車メロディが流れた瞬間、二人のあいだに特別な言葉はなかった。
ただお互いに、磁石が引き合うように、離れられなかっただけだった。
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