第4話 絆と翔

 永遠が大介さんに紹介したように、大阪の実家の隣の家に住んでいる絆とは同級生で幼馴染やった。


「かけちゃん…

 じゃなくて、翔。

 久しぶりだね、おかえりなさい。」


「絆…

 久しぶりやけど、変わりなさそうで安心したわ。」


 絆とは幼稚園、小学校、中学校、高校ずっと一緒やった。オレが高校2年の春に転校するまで。

 親が転勤になり、姉の永遠は転校したくないから大阪に残ることにしたけど、オレは環境を変えてみるのも悪くないと思い、東京に行くことを決めた。


 東京に行くこと、絆にはオレからは話してないな。たぶん絆はオレが東京に行くことを永遠から聞いたんやないかと思う。


 小さい頃から兄弟みたいに育って、オレにとってはとわちゃんが姉貴で、絆ちゃんは妹みたいなもんやった。

 せやけど、あれは中学2年の頃、その頃って、思春期やろ?オレは友達の前でかけちゃんと呼ばれるのがホンマに恥ずかしくて、とわちゃんと絆ちゃんに、

「かけちゃんと呼ぶの辞めてや。」

 なんて、学校の帰り道に二人に言っちゃったんだ。

 今思うと、そんなこと言うやつのほうがよっぽど恥ずかしいけどね。


 それからオレと絆には、ちょっとだけ距離感が離れたような感じにはなったかな。

 永遠と絆は姉妹というより親友みたいな感じなんかな?家にはよく遊びには来ていたから、家でも学校でも挨拶ぐらいは当たり前にしたし、3人で出掛けたり、毎日顔を見ない日は無かったけどな。


 そして、あれはオレが東京に行く前の日。

 絆から告白されたんだ。

 オレのことが好きだって。


「オレは絆のことは今日まで家族だと思ってきたから、ごめんな。」


 オレはそう答えた。絆からの告白があまりにも予期せぬもので驚いたから、そう答えることしかできなかったんだ。

 今の時代、距離が離れても電話やSNSで連絡を取り合うことはいくらでも出来たけど、オレ達はそうしなかったんだ。



「大介さん、寝ちゃいましたか?」


 オレと大介さんはリビングの隣の和室に布団を敷き、灯りを消して寝ようとしていた。


「ちゃんと聞いていたよ。」


「大介さん、オレは最低の男ですか?」


「思わないよ。

 むしろ、翔にもそうゆうところがあって安心したよ。

 翔は、涼太と羽根ちゃんのことは何でもわかってるような顔して見てただろ。

 だから、翔にもそんな一面があって安心したな。」


「えっ?オレ、そんな顔してました?」


「ふふ。

 俺だって恋愛関係で悩んだこともあるし、相談に乗れるほどの器ではないけどさ…

 翔が今、そうやって絆ちゃんのこともしかして後悔しているのなら、まだ間に合うと思うけどな。」


「後悔?

 うーん、どうなんやろ…」


「悩め、悩め。

 それも相手のことを考えていることになるんだから。」


「わかりました、大介さん。

 おやすみなさい。」


「おやすみ、翔。」

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