第3話#馴れ初め

今は紆余曲折を経て、千葉はY市に住まっている。29歳で越してきた。


私たち久輝ひさき家は駅からは徒歩30分程離れていて、車があれば非常に住みよい。


久輝ひさき家は、何?どうやって知り合ったの?」

「中学の同級生~」

出会って始めの頃に聞いてきたのは、私と同年のママ友“丘 あみちゃん”だ。


あみちゃんは私と同い年で、呆けたところがある二児の母。

我が家の長男“丈”《じょう》と、あみちゃんの長女“すみ”が同じ幼稚園の組だった。

あみちゃん夫婦は職場婚。やはり同級生で――…というのは珍事件。


自分でも同級生婚は憧れるものがある。

実際利点があり、結婚式では共通の友達を招待するし、親同士の話も、中学の時の担任の話なんかで盛り上がるではないか。

住んでいたのがお互い八街だけに、田舎話はすこぶる調子良い。


開発が進む予定だった団地。本当だったら成田空港ではなくて八街空港だったこと。

もともと買おうと思っていた土地が佐倉方面だったが、地価が高騰しすぎて買えなかったやら

こんな文句ばかりだが、愛着を感じる。


何より、思い出の共有がながいということ。

今でも中学の頃を鮮明に映像で思い出すとき、隣の席の久輝君だ。

あの頃の春夏秋冬を二年間共にした。


不思議な存在だ。


―――…私は、クラスのヒエラルキーでいうとちょっと当てはまらないグループに属していた。

パット見中堅なんだが、一緒のトイレ掃除をさぼっていた女子の愚痴をちょっとこぼしていたところ、さぼり本人に聞かれて

憤慨したさぼりは、金魚の糞をしていた、赤毛のアン似のボスを呼んできたのだが


「さぼってる方が悪いんだから、言われて当たり前じゃん??」で、子分を一掃し、思いのほか私とボスが仲良くなったのだ。

性格までアンだったのかと、憧れで上気した。(この頃、アンの青春を読んでいた)


なもんで、もう少し平々凡々なグループに属するはずが、異色のコンビとしてクラスに存在することになった。


それが男子にも不思議なところだったのであろう。

私がいじめにあっているのでは。そんな目だったのかもしれない。


さて、私と琶子とは席替えはもちろん係も一緒。それが普通になった。

くだんのさぼりが、私の欠席時にあった係決めで、不利になる様な決め方をしたとか―――…


私は琶子から多くを学んだ。

噂話をするときの鉄則。友達は裏切ってはいけない。慮れなかったときの謝り方。

噂話なんて下劣に聞こえるが、人を陥れるような言葉は交わしたことがない。

この彼女との経験は私を大きく編成した。


彼は知っている。

琶子とのやり取り、他のクラスメイトとも和気あいあいだった。

体育での着替えも一緒の室内だ。(隠してはいたが見えるものは見える)

男子の間で、私に好意を寄せてくれた人間が居たこと。


久輝 宗助そうすけは、私に興味がなかった。私も久輝のことは眼中になかった。

恋愛対象として全く当てはめたことがなかったが、友達としては断然アリな奴だった。

いわゆる「お友達としてしか見られません」タイプだ。


そんなお互いがどこで何を間違えれば付き合うことになったのか。

よく覚えてはいない。(と、若干嘘になるが、語ると非常に長いものになる)

私と久輝との付き合いで、琶子によって作られた私の部分は貴重な物となっていた。

お互いそうなんだが、非常に口が堅い。

“内緒だよ”は墓場まで持っていく話だと認識している。

友情に熱い部分も彼女の影響だと思われる。


信頼関係が確実に存在している。そう実感できた。


私たちが結婚に至った要因は、レディーファーストだったこと。

それに通じているかもしれないが、イかせてくれたことである。

相性が良かったのだといえる。


夫婦にとって、夜伽はついて回るのだから……



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