Evening/Good bye-8


「シュウ!?」

 アラタが困惑して、大きな声を上げた。それは、この緊張を一気に解き放ってしまう。

「やっぱ、そう、だよね」

「アキ! どういうことだ!? お前、そっちの奴らと知り合いなのか!?」

「アキ!? どういうこと?」

「どういうことだ、アキ」

 マキが呆然と頷き、向こう側の三人が恐慌に陥ったようにシュウに問い質している。

 そんな中、こちら側の三人の中では一番状況を呑み込めていないアラタが、シンジロウに顔を向ける。シンジロウは、泣きそうな顔をしているアラタに向かって、言った。

「……気づいて、なかった、のか……? ……シュウは、女だ……」 

「ええ!?」

 改めて、アラタはシュウを見る。視線に晒されたシュウは、はにかんで首を傾げるばかりだった。まるで反省していないどころか、少し嬉しそうだ。頭を掻いて、舌を出した。

「待てよ、どういうことだよ……」

 アラタは頭を抱え、必死に頭を巡らした。呟きながら、事象を整理する。

「シュウは、女だった……? いや、それはいい。それより、向こうのあいつらは何だ……? どうして俺たちはあいつらが入って来ることに気がつけなかった……? 足音は? 防犯カメラは……?」

 考えられる答えは、ひとつしかなかった。

「あいつが、シュウ……?」

 顔を上げる。ひとりの小さな女性が、すらりと、立っていた。

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