第58話 透明①

 喫茶店で憲と待ち合わせをしていた。


 「ごめん。お待たせ」


 「義兄さん。遅いですよ」


 少し、世間話をしてから憲は本題に入った。

 

 「お姉ちゃんが出てこなくなって、もう7年経ちましたけど、どうですか?お姉ちゃん出てきましたか」


 「いや、出てきてない」


 「そうですか」


 寂しい表情になる憲。

 水族館でデートをした日を境に西川さんは表の感情に出てこなくなった。その代わりに悪西川さんが表の感情に出てきている。


 「・・・これで、元の西川さんなんだろ」


 「気づいてましたか」


 憲の返事を聞いてやはり、と思った。

 いじめられていた、悪西川さんが消えたく願った結果が、あのおとなしい性格の西川さんであった。

 おかしいと少し思っていた。

 何故、周りから消えてなくなりたいと思ったのに、あんなにも活発な性格なのかを。答えは元々の西川さんの性格がそうだから。


 「けど、義兄さん。僕が生まれた時からのお姉ちゃんは今いるお姉ちゃんじゃありません」


 だから、憲は悪西川さんをお姉ちゃんとして、認めることが出来なかった。

 反対に御両親の方は娘が元の性格に戻ったと喜んでいたのだ。



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