第50話 行方不明⑤

 佐阿が手を掴むが鈴は振り向けなかった。

 泣いているのはもう、バレてしまっているがここで振り向いたらここまで溜めていた気持ちが溢れ出して収集がつかなくなってしまうからだ。


 「ごめん。もう、本当に離して」


 「いや、駄目だ」


 佐阿に触れられているとどんどん気持ちがしんどくなる。

 それは嫌だからではない。むしろ、触れられて嬉しいと思う。

 心では嬉しいと感じても。頭の中でもう自分の彼氏になるとこはないと考える。

 そうすると気持ちはしんどくなってしまっていた。

 

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