第50話 行方不明④

 全力で走って駅前まで来た。

 駅前で辺りを見渡す。

 大丈夫。辺りに人はいない。

 今なら思いっ切り泣ける。


 「うぅ、ぅぅ」


 「おい」


 後ろから声をかけられた。

 振り向くと息を荒くしている佐阿がいた。

 

 慌てて前を向いて佐阿に泣き姿を見られないようにした。


 「なんで、ついてくるのよ。佐阿には西川さんがいるのに」


 「泣いている女の子をひとりで帰らせれるわけないだろ」


 佐阿は良かれと思ってそう言って来てくれたのであろうが、私にはつらい。

 片思いでこの実ることのない恋。

 あの時ああすればよかった。そしたらと後悔するたびに胸が締め付けるように痛く、虚しくなる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る