第10話 付き合う(by西川無華)
私はお見舞いにきた。
久しぶりに弟と喋ってこの病室まで案内してもらった。
この扉の向こうの病室は私にいきなり告白をした人でボロボロになりながらも私の事を助けてくれた人がいる。
弟が病室から出て私が病室に入る。
ベットにいる彼。
「「……………」」
なんと話せば良いのか分からず、言葉が出てこなかった。
長い時間必死に頭の中で話す言葉を考え声にした。
「その…ありがとう」
これが私が考え抜いた一言であった。
「?!…どういたしまして」
「「……………」」
再び沈黙が始まった。
もうこれ以上話す事が思いつかない私は病室を後にすることにした。
「…お大事に」
私は病室出ようと扉に手をかけた。
「待って」
彼に止められた。そして、彼は私に謝ってきた。
「…あの告白の事。ごめん。あんなに目立つところで告白して」
なんなんだろう。彼は。
こんな私の事をどうしてそこまで心配してくれるのであろう。
みんなの前から消えたくて、みんなを無視して関わらないようにしていた私だったのに。
今だって。今だって私は消えたいと思っている。
けど、彼には私を見て欲しい。そんな風に思ってしまっている自分がいる。
明らかに異常だ。このままでは私が私でなくなるそんな気がした。
だから、私は彼の嫌な所を見つけようと思った。そうすれば、また、いつもの私になれる。
彼を嫌いになる為に私は彼の告白の返事に「いいよ」と返した。テレビで付き合ったら相手の嫌な所を見つけてしまうって言っていたからである。
付き合って彼の嫌な所を見つけてやろう。そう密かに心に思っていた。
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