第2話 謝罪
休日の昼過ぎ、ファミレスには家族連れや若いカップル、老夫婦などで賑わっていた
「え、えっと酢イカこと鈴木 琢磨です」
「カイトこと
そんな賑わっている中、ぎこちない男女の会話がテーブル席で交わされていた。
「えっと......」
「......ごめんなさいっ! 」
「......えっと? 」
そんな気まずい雰囲気の中、彼女の唐突な頭を下げた謝罪は、その場にいる周りの人までをも巻き込んで気まずくさせた。
「驚くかもしれませんが実は、私、女なんです...! 」
「うんそれは言われなくても見てわかるよ」
「私、いつもこの整っている容姿のせいでよく分かんない男性の人に言い寄られるんです」
「うん自分で容姿が良いって言ったら少し問題ない?まあ確かに良いけどさ?」
「だからネット上では性別を偽っているんですけど、イカさんとは仲良いし打ち明けたいとは思っていたんですけど......」
「タイミングが無かったと」
「......はい、そういうわけです。
ほんとにすみません」
謝罪の言葉を述べながら再び彼女は頭を下げた。
その彼女の誠意こもった謝罪に琢磨は優しく苦笑しながら「そんな謝んないで下さいよ」と彼女にいった。
琢磨は、春佳のその行為に理解があった。
何故ならば、琢磨自身が二年前に似たような事で苦い経験をしていたからだ。
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それは学生イベントによくある卒業式の日に告白をするというものだ。
琢磨は当時3年間同じクラスで毎日遊ぶほど仲の良かった 川島
人生初の勇気を振り絞った一大告白イベントは悲惨なものだった。
体育館裏、桜の木の下というシチュエーションは完璧だった
「美月あのさ......」
「なに?琢磨君」
そう聞き返した彼女の表情は何故だかとても不安そうだった。
そんなことなど構わない様子で強い風が琢磨の背中を押すように吹き
「......美月の事が好きです! 付き合ってください! 」
琢磨はその言葉を言い切った。
その言葉の後しばらく沈黙が流れ、しびれを切らした琢磨が下げていた頭を上げると目の前の少女は涙を流していた。
「なんでっ......どうして......琢磨君は友達だと思ってたのに......信じてたのに......」
当時の美月はその見た目の美しさから色々な男子生徒に言い寄られて恋愛に飽き飽きしていた。
そんな中で唯一純粋な男友達でいてくれた琢磨には色々と美月の心の支えになっていた。
その今まで語られた来なかった彼女の心情をその場で直接聞いた琢磨は
「そんなの......知らねぇよ......」
と怒りと悔しさと悲しみの感情が入り混じった声で言うとその場を逃げるように去った。
その日から美月とは連絡をパッタリと取らなくなった。
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