7-8

パシャパシャとフラッシュを切られ、

三分間のお披露目タイムは無事終了した。



「はあ…はあ…」


「奏美ちゃーん!お疲れ!!!」

「お疲れ様〜!!」

「あ、ありがとう…」


「冴島先生もお疲れ様でした!」

「いえいえ、ありがとう」



想像以上にぐったりしている。

これはヤバいな…。


でもこれ、本当は違う女の子がやる予定だったんだよね。

そしたらその子が、将にいとあの距離で…。



「いや!!!」

「「「えっ?」」」

「あ、いえ…、文化祭楽しいや〜、みたいな?」

「それはよかった!」

「奏美ちゃん渋々だったから…」

「そんなことは……あははは」



もし私が代役を引き受けてなかったら?

意地でも違う子を探すだろうし、

相手が将にいだと分かれば大半は快諾するだろう。

…そんなの、嫌だ。


未然に防げた達成感もあり、元の姿に戻るまでかなり時間を要した。



「あれ、将に…冴島先生はそのまま?」

「うん、俺はコスプレっていうか着替えただけだから、これでいいかなって」

「似合ってるからいいんじゃないですか」

「ありがとう」



スクエア眼鏡も、いい。



┉┉┉┉┉┉┉┉┉┉



「はあ、疲れたー」

「奏美ちゃんお疲れ様!めっちゃ似合ってたよ!!」

「ああ、ありがとうございます…」

「大丈夫?少し休む?」

「…はい、すみません」

「いいよいいよ、じゃあ涼しいし屋上行こっか」



とことこ階段を上がっていく。

わざわざ一階から屋上まで行かなくてもと思ったけど、

今はこのざわめきから逃れたかった。



「あっ、いっけない俺シフトだった!!」

「ええ!じゃあ早く行かないと」

「ごめん奏美ちゃん!一緒に回れて楽しかった!ありがとう!」

「行ってらっしゃい!」

「ちゃんと休んでよー」

「はーい」



そうそう。別に悪い人じゃないんだ。

むしろ気遣ってくれるいい人。

そのまま階段を上がっていった。




がちゃん。重たいドアを開ける。

相変わらず立ち入り禁止の屋上にも

来慣れてしまった気がする。



「はあ…」



どうしてさっき、わざわざ将にいは…。


スリルしかない状況であんなことされて、

ドキドキしない人間がどこにいるだろう。



「……私の事、どんなふうに思って、したんだろう…」



これがもし、友達なりクラスメートなりだったら

完全脈アリ両思い確定だろうけど、

将にいは私の兄だ。話が違ってくる。


海外ではハグもキスも挨拶同然だし、

あれくらいどうしたことはない。(唇同士は別だけど)

でも、小さい頃からそういう感じではなかったし

あの状況にテンション上がったからって、

安易にそんなことする人じゃない。



「ああもう!」



ぐるぐる、将にいが頭から離れない。

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