7-6

「あっ、奏美ちゃん!…葉持先輩!?」

「きゃー!うそ!!?」


「「どうしたの?」」



会場の講堂に入る寸前で後ろから声を掛けてきたのは、

文実委員のTシャツを着た同じ学年の女の子ふたりだった。



「あの実は、出場予定だった子が急に出られなくなっちゃって…」

「ええ?それは大変だー」

「(先輩すっごい棒読み…)」

「衣装はあるので、代役を探してるんですけど…」

「女の子?男の子?」

「ええと…なんというか…」

「…なんです」


「「え?」」



男装?ってことは女子?

いやでも男子が着れば…それじゃコスプレにはならないか。



「サイズは?同じくらいの子探してきてあげるよ!」

「急に親切ですねボソ」

「やめて〜」


「身長が160センチ無いくらいで…」

「体型は…あ、ちょうど奏美ちゃんくらいの!」

「ええ…」


「奏美ちゃん、身長いくつだっけ?」

「…158です」

「ビンゴじゃん!ここに居たよ!」


「奏美ちゃん!!!」

「はいっ?」



智也みたいなうるうるお目目を、全力でこちらに向けてくる。



「奏美ちゃんしかもう居ないの…時間もないし…」

「「やってもらえない!?」」

「…そんなあ」


「やってあげたらいいじゃない」

「葉持先輩まで〜」

「意外と似合うかもよ?」

「わざわざ代役立てなくても…」

「「必要なんですっ!!」」

「あ、ごめんなさい…」



あーでもないこーでもないと言ってる間にも

イベント開始時刻は近づいてくる。


嫌だなー。恥ずかしいし、男装なんて未知数超えてるし…。

そもそもコスプレなんてした事ないし…。


でも、結局五度目のお願いで折れた。



「「お願いします!!!」」

「…わかった」

「えっ…ほんとに…!?」

「ありがとう〜!!!!!」

「じゃあこっち!」

「へ?あっ、ああ待って!?」


「行ってらっしゃーい」



┉┉┉┉┉┉┉┉┉



「よしっ、完璧!」

「奏美ちゃん、想像よりずっと似合ってるよ」

「…そ、そう?」

「「うん!!」」



他の出場者の人達も、私の方をちらちら見てはザワザワしてる。

顔、薄いからかな。



「あ、奏美ちゃん」

「ん?」

「ひとつ言い忘れてたんだけど…」

「うん………ええっ!?」

「そういうことだから、よろしく!」

「ちょっと!!」



嘘でしょ…。

それ聞いてたら絶対断ってたんだけど!?


隣の方から、コツコツ足音がする。



「「…あ」」

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