7-5

我がめろんぱんアイスは、今年も順調な売れ行きだ。

渾身のクラスTシャツも色んな人に褒めていただいてる。



「今年の文化祭は楽しいなぁ」

「去年楽しくないみたいな言い方すんなよ」

「楽しかったけど、疲労の方が大きくて…」

「ていうか、ずっと店番してるけどいいの?」

「智也だってそうじゃない」

「俺さっき入ったばっかだぞ」

「え、そうだっけ」

「全く、将来社畜になりそうで心配だわ」

「それは無い…はず」

「とにかく、シフトの奴が来ないからって出っぱなしはダメだからな」

「でも一人で行くとこないよ〜」

「ちょうどお誘い来てるんじゃない?」

「へ?」


「奏美ちゃーん!」

「…あ」



きらきら笑顔で手を振っているのは、久々登場の葉持先輩だ。



「行ってらっしゃーい」

「…いってきまーす」


周りからの視線が怖い。




「あっ、きたきたーっ」

「こんにちは、先輩」

「久しぶりだね〜!会いたかったよ!」

「そうですね〜」



このキラキラオーラには、いつまで経っても慣れそうにない。

何よりやっぱり、周囲からの好奇の目が辛い。



「ねえ!タピオカ飲もうよ!」

「はい、飲みましょ」

「僕の奢りね」

「えっ、いや」

「文化祭デートの報酬的な?」

「報酬って…パパ活じゃないんですから」

「いいの!自己満だから!」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

「そうこなくっちゃ!…すみませーん」



店番の生徒は、葉持先輩だと分かると途端にソワソワし出す。

隣りに私が居ることも気に留めず、二つ頼んだタピオカを

両方ともこっそりサービスしてくれた。これはメリット。



「はい、どーぞ」

「ありがとうございます」



タピオカ、久しぶりだな〜。

最近出かけるとか買い物以外で無かったし、

文化祭って遊べると楽しいんだな。



「ねえねえ、これ見に行かない?」

「なんですか?」



文化祭のパンフレットを広げて指差していたのは、

先生たちと文実委員が主催のコスプレ大会だった。



「先輩、こういうの好きなんですか?」

「これ毎年すっごい面白いんだよ!行こうよ!」


私は行ったことないイベントだった。

どうせなら新しい経験をしてみてもいい。


「行きます!」

「よし!じゃああと30分で始まるから行こ!」

「はいっ」



このあと、これがとんでもない事になるとは

私も先輩も、そしてあの人も、考える由も無かった。

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