5-10

「先に寝るね」

「うん、おやすみ、奏美」



その人への気持ちが変わると、些細なことにも気づくようになる。

将にいは必ず、私の名前を呼んで、おやすみを言ってくれる。


衝立の向こうに、いつ将にいがやって来るのか

なぜかドキドキしてしまって、全然眠れない。


すると、引き戸の向こうで声が聞こえてきた。



「そっちはどう?変わりない?…うん、うん……」



電話?電話してるのかな。

誰だろう。友達か先生だろうな。


気になって気になって仕方ないので、

音を立てないように引き戸に耳をくっつける。



「ああそうだよね…え?いや無いよー」



仕事っぽくは無いなぁ。。



「そんなこと言ったらお…ちょっと!そりゃないよ」



なんだか凄く楽しそう。

さっき「お」って言いかけてたけど…

お○○さんって名前なのかな。



「うん、わかった、伝えとく」



何を伝えておくんだろう。

やっぱり仕事の電話かしら。



「うん、うん…、また会いに行くから」



会いに行く…

会いに行く……?



「会いに行く!?!?」



あっまずい。声が漏れてたかも。

いやそれより、これは事件だよ…。


会いに行くって…まさか、恋人?

やっぱり居るの??嘘でしょ?

やだやだやだ。そんなの嫌だ。


いや、落ち着け奏美。

電話の相手に会いに行くとは限らないじゃないか。

会話に出てきた第三者かもしれない。


ヤキモチを焼くのはまだ早いぞ。



「今度は一緒に行くよ、今度こそ」



今度こそ?

もしかして、その恋人を私に紹介する気なんじゃ…。



「うん、じゃあまた今度」



終わったみたい。早く戻らなきゃ。

足音を殺して自分の布団へ潜った。



…誰なんだろう。

どんな人なんだろう。


はっ。そういえば、去年の春───



「高校どう?」

「うん、まあまあかな」

「なんだよ〜せっかく第一志望入れたのに」

「私は大学に入るために選んだの!」

「つまんないな〜」

「つまんなくて結構〜」

「そんなんじゃ彼氏できねーぞ〜」

「いいもん!……て、そういう将にいはどーなのっ」

「え?」

「彼女、いないの?」

「いやぁ、俺は…」

「…なに、居るの?」


そのときの将にいの顔は、なぜか忘れられなかった。


「好きな人はいるよ」

「へえ〜、どんな人?」

「うーん…言ったらバレちゃうから言わなーい」

「え!?私も知ってる人!?」

「さあね〜」



その頃は当然、将にいは前の学校に居たわけで。

もし花榎にいるとしたら、条件に当てはまる人って……?



「まさか…河野先生…?」



さすがにそれは無い?でも分かんないよなぁ。

もしかしたら他にも居るよね。

実は大学同じだったとか、はたまた中学とか高校同じとか!

バイト先で知り合って再会したとか…。

範囲を学校以外に広げれば、ますます候補も増える。



「私も知っていて、将にいの恋愛対象になりそうな人…」



頭の中に数人の女性が駆け巡る。

同性に拡大すれば倍以上になる(将にいの友達とは結構知り合い)。



「どうしよう…どうすればいい…?」





───────第5話 fin──





 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

第5話、ありがとうございました!

どんどん読んで下さる方が増えてきていて

本当に本当に感謝です😭


将太に恋人疑惑(?)

探偵・冴島奏美の登場です笑

電話の相手は一体…


次回もお楽しみに!

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