5-4

あれから結局、何も話してくれないまま

中間試験は最終日を迎えていた。



「かーなーみ〜」

「どしたの晴香」

「中間終わった〜〜」

「いやまだあと三教科あるけど?」

「そういうことじゃなぐで〜」

「ああ、撃沈ってことね」


「奏美はいつも余裕があっていいよなー」

「そんなことないよ」

「人に教えられるってそういうことでしょ」

「今回もお世話になりましたわ」

「二人まで…」



あれから智也も、何も言ってこない。

佳月とは、以前のような関係が続いている。

晴香も相変わらず、佳月を目で追っている。



「とりあえず、テストがんばろ!」



┉┉┉┉┉┉┉┉┉┉┉



「死んだ…」

「俺も…」

「ちょっと二人ともっ」

「奏美は?」

「私はまあそこそこ…、佳月は?」

「俺もそこそこ」

「帰宅部員強すぎ!」

「私と智也は運動部だもんねーっ」

「ねーっ」

「謎の結託してる…」



実際、部活やってないんだから勉強時間はあって当たり前。

でも冴島家はそうではない。

家事労働のために部活を辞めたのだ。

時間的にも疲労的にも、運動部とさして変わりない…はず。



「しかも俺このあと学級委員会だし…」

「あ、忘れてたそれ」

「忘れんなっ」

「ごめんごめん」



前の学級委員会の日…


『俺ほんとに嫌だかんね?』

『冗談じゃないぞ』


あれから、本当に何も言ってこないけど

智也は私に何て言いたかったんだろう。


『俺、割とガチで奏美のこt』

…俺、割とガチで奏美のこと、好きだよ。


そんな言葉だったんじゃなかろうか。

これは自惚れ?自意識過剰?

今度こそ喜べない告白だとしたら、

同じように伝えればいいのかな。

─恋愛感情は持てなかった。


いいや、これはただの思い過ぎだ。

何を過剰に。自惚れにも程があるだろう私。

今はただ、自分の届いてはならない想いを楽しめばいいのだ。

楽しめなくなった時、他の恋を探せばいい。


逃げるためだけに、他人を利用することはしない。

誰も幸せにはならないし、むしろ傷つけるだけだから。



「奏美ー?行こう」

「…あ、うん」


「じゃあな」

「頑張ってねー!」

「二人ともバイバーイ」



再び前に振り向くと、智也と目が合った。



「智也?どした?」

「…行こう」



悲しみとも怒りとも捉えられない表情。

智也のこんな顔、初めて見た。

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