4-10
「んっ!美味しい!!」
「よかった」
「やっぱ最高だね、奏美の料理は」
「今日は手抜きだよ」
「じゃあ本気出したらやばいね」
将にいは相変わらずだ。
あれから佳月のことを聞いてくることもないし、
本当に今までと、何ひとつ変わらない。
聞かれなかったからいい…。
そう思っていたけど、もう違う。
きちんと伝えることを伝えなきゃ。
関係を変えたいだとか、少女漫画のような展開を求めてるわけじゃない。
今まで通り。今まで通りでいい。
私たちはいつまでも、仲良しな兄妹でいられるはずだ。
「将にいっ」
「ん?」
「ご飯食べたら、話があるんだけど…いいかな」
「うん、わかった」
大したことじゃないだろうという風な感じで了承を得た。
なんだかとても緊張する。
スプーンを持つ手が少し強ばった。
┉┉┉┉┉┉┉┉┉
「で、どうした?」
「ああ、えっと…」
二人ぽすんとソファに腰掛けていた。
触れるか触れないか、ぎりぎりの小指がピクっとする。
「…大丈夫?奏美」
「う、うん」
瞬きの回数が増えるのが自分でも分かる。
正座に座り直して、将にいの方を向く。
将にいも応じるように、背筋を伸ばしてこちらを向いた。
「あの…、佳月のことなんだけど」
「ああ…うん」
「付き合ってるわけじゃないし、付き合うこともない」
思わず早口になってしまった。
将にいは口を半開きにして、私の顔を見つめている。
「えっ…?ほんと?」
「うん」
「そっか…、なんだ〜そっか〜!」
「告白は、されたんだけどね」
「えっ?」
将にいの表情が戻る。
「色々あってまだ正式に断れてないんだけど、きちんと断るつもり」
「奏美は、その、田宮のこと好きじゃないの…?」
「うーん…友達としては好きだし大切だけど、恋愛感情は持てなかったっていうか……」
「じゃあ…っ」
そこで言葉を詰まらせた将にい。
「将にい、なに?」
「いや、その…」
ああ、たぶんあのことだろう。
それも説明しなきゃ…ちょっと喋りにくいけど。
「佳月が、将にいのピアノのこと、教えてくれてね?先に音楽室に行ってたの」
「やっぱり…」
「それでそのー、佳月は、私は将にいのことが好きだって思ってるみたいで」
「ええっ」
「そんなことないって言ったら、ああいう感じに…」
「ああー、そういう感じか…」
「ほんとに、何にも無いからっ」
それで…、あとは何を言えばいいんだっけ。
「それでねっ、あと、もう一つ言わなきゃいけなくて」
「ん?」
ああもう。その吸い込まれそうな瞳のせいで、何も言えない。
「奏美?」
「ごめん、やっぱりまた今度にする」
「わかった…」
何が何だか分からないというような感じだった。
そうだよね。でも、まだ分からなくていいよ。
突然思った。
素直に言ってしまったら、佳月とのように関係が壊れてしまうかもしれない。
それは、将にいとは絶対に嫌だ。
何より、血の繋がった兄である上、生徒と教師という関係なのだ。
そんなこと、現実になってしまったらダメなのに。
そんな考えが、音にしようとした言葉を喉で詰まらせた。
まあでも、将にいの誤解を解けただけ進歩だ。
ようやく自分の気持ちに向き合うことが出来た。
初めの一歩は、逃げない方の道へ踏み出した。
───────第4話 fin──
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第4話、ありがとうございました!
次回もお楽しみに✨
※
実は、閲覧数5000PVが目前なんです…!
フォロワーさんも20人を達成しました!
本当に本当にありがとうございます😭
最後までよろしくお願いいたします🙏
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